第26話 神獣②

「君たちの言葉で言うなら……聖獣、あるいは神獣か……持て余している怪物がいるんだ」

「神獣……」

「ああ。神というのは必ずしも我々に笑いかけてはくれなくてね……幾度も国の危機に陥った。いまは世界樹の魔力を使って封じてある」

「そんな存在……いや、待てよ……?」

「人間にも伝わっているか?」


 確信はない。

 だが想像はつく。

 神話で語られる伝説の存在に、人もエルフもドワーフも、あらゆる種族を滅ぼさんと暴れた魔物がいると……。

 いや正確には暴れたわけではない、ただ動いただけで大きな被害をもたらすような、そんな存在。


「四獣……封印したってことは、霊亀か?」

「御名答」


 神話の世界の魔物だ……。

 伝承を信じるならドラゴン百体はくだらない怪物だぞ……?


「君にとっては足りない戦力を補強するチャンス。我々にとっては厄介な魔物を始末するチャンス……どうだい? 悪い話ではないと思うが……」

「いやいや待ってくれ……いくらなんでも……」


 俺の言葉を遮ったのはシャナルだった。


「兄さんならできるでしょうね……」

「ほう?」

「おいシャナル!」


 そして追い打ちをかけるように、エリンがこう言った。


「私の精霊も……ユキアさんならできると……」

「決まりだな」


 レイリックが席を立つ。


「いつでも良い。その気になったら言ってくれ」

「……わかった」


 そう答えるしかないだろう。

 もうこうなったらうまく利用させてもらうとしよう。


「今すぐ行こう。ここから世界樹はどのくらいかかる?」


 俺の答えを待っていたと言わんばかりにニヤッと顔を歪ませて、レイリックがこちらを振り返った。


「この子を乗りこなせるというのなら、半日もかからんな」


 そう言って連れてきていた馬を撫でる。

 綺麗な馬体をした白馬……だと思っていたが……。


「ペガサス……?」

「正解。空を駆ければすぐだ」


 こうも次々に幻獣やら神獣やら……いやそもそもエルフがそういう存在か。

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