第25話 神獣①
「なるほど……。王国は馬鹿なのか」
「身も蓋もないな……」
レイリックに伝えたのは俺が宮廷テイマーをやっていたこと、その任を解かれて国外へ追放となって逃げるようにこの地に転がり込んだことだ。
当然その背景を伝えれば敵対勢力の攻撃も予想できるんだが、それについてはレイリックは笑いながらこう言った。
「放っておけばよいだろう。まさか今のユキアに手出しなど出来ぬし、私がさせぬ」
「出来ない……か?」
「自覚がないのか……これだけの大戦力……はっきり言って今回の私は決死の覚悟でやってきていたのだぞ。全面抗争になれば繁殖能力の低いエルフでは再起ができない可能性を考え、王との一騎打ちのためにやってきたんだ」
「そんなにか……?」
どうやら俺が集めた、というより勝手に集まってくれた魔物たちはいつの間にかエルフが脅威に感じるほどの大戦力になってしまっていたらしい。
「どうしてもと言って聞かずにやってきたのが今回のメンバーだ」
なるほど道理で気が強そうなのが多いはずだ……。
エリンはその限りではないが、それでもどこか芯を持った子なんだろう。
「ただ、俺はこれだと足りないと思ってる」
「お前は神にでも喧嘩を売るつもりか?」
「まさか……ただレイリックがそう選んだように、俺個人が弱い……」
レイリックがもし暗殺を選んでいたら。
何のためらいもなく一捻りにしようと考えていたら……俺はここにはいなかっただろう。
「なるほど……」
「テイマーの秘密を話そう」
レイリックは信用に足る人物だ。
そう考えて相談込みで話をすることにした。
「俺はテイムした魔物から力を得て強くなる」
「なにっ⁉ では……」
「強力な魔物をテイムすれば、魔物が戦力として増えるだけじゃなく、俺自身が強化されるんだ」
「それは……とんでもない力だな。エルフは生まれながらにして決まった力しかもたない。人間は成長力が強いと思っていたが、それでもそんな形で強くなれる存在を私は知らぬ……」
レイリックの言葉の端々にも驚きが見て取れたが、それ以上に後ろに控えていた家臣団が驚いている様子が見受けられた。
「そんな力が人間ごときにっ⁉」
言葉を発したのは後ろに控えていた短髪のエルフだった。
レイリックがすぐさまそれを叱責した。
「アドリ、私の友人を侮辱する気か?」
「いえ……失礼いたしました……」
アドリと呼ばれたエルフはそれでなくても白い肌を真っ青にして姿勢を正した。
敵対した時に感じた容赦の無さは同族にも向けられるようだな……。
「すまなかったね」
「いや、気にしてない」
むしろエルフがこちらをどう認識しているかわかってありがたいくらいだ。
「君のテイム……どの程度の相手まで通用する?」
「どの程度……考えたこともなかったな」
俺の代わりにシャナルが答えた。
「兄さんはテイマーの中でも規格外です。ドラゴンの群れくらいなら一発でテイムしてしまいますよ」
「ドラゴンをっ⁉ そうかそれならば……」
言いかけたレイリックを遮るように後ろにいたエルフが声をあげた。
「陛下まさかあの怪物を……⁉」
「怪物……?」
気になる単語が出てくる。
レイリックがニヤリと笑いながら説明を加えてくれた。
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