第19話 お客さん2
「さてと……」
改めて手紙を見る。
宮廷テイマーだった俺がいなくなってから、王宮の生物たちはすでにテイムを解除するのに十分なほど不当な扱いを受けているという。
代々引き継がれてきた生き物たちだ。丁重に扱ってさえいれば俺のテイムが切れてもほとんどは言うことを聞いたはずなんだ。
それがもはや、崩壊寸前だという。
「手紙の時点でということはもう暴れていてもおかしくないか……」
手紙の続きはこうだった。
『これだけの戦力を相手に対抗できる騎士団など我が王国は持ちません。
ですがユキアさんならば、王宮の危機を救うことが出来るはずです。
いえユキアさんならば被害も出さずに解決できるかもしれませんが……被害は出してください。
報いを受けるべき人間が報いを受けたのち、ユキアさんが王国を救うのです。
そうすれば流石の父も待遇を改めるはず……ユキアさんに対する不当な扱いを改め迎え入れるはずです……!
どうか、身勝手な願いですが王国をお救いください。
どうか……』
この手紙を見るだけでミリア様に何が起きているか想像できる……。
王宮での発言権はもう、全くなくなったんだな……。
「さてどうしたものか……まあとりあえずはそっちの話も聞こうか」
精霊の方に顔を向けると、空中でしゃがんだ姿勢を作って待っていた身体をゆったり起こしてこちらに近づいてきた。
「待たせて悪い」
「良い。王が会いたがっている」
精霊は淡々とそう告げる。
「王……」
「人間は王を、エルフと呼ぶ」
「エルフっ!? 待て、エルフがわざわざ使者を出したのか……!?」
エルフって人間との関わりを避けて森の奥深くの里から出てこないはずじゃ……しかも王って言ったか……?
「エルフの王が来るってことだよな?」
「そうなる。三年以内に来る」
「三年以内……?」
「人間の感覚なら三日以内になる。エルフは流れる時間が違う」
「なるほど……」
まあだとしたら気長に待つしかないか。
エルフの里にこちらから近づくことはできないしな……。
となると……。
「国を救う気はないけど、ミリア様だけはなんとかしたいところだな……」
「どうしたんですか兄さ──えっ、精霊⁉」
「シャナル……ああ、シャナルと母さんに相談して決めようか」
「決めようかって何を……? それよりお客さんです兄さん!」
「え……?」
どうやら考える時間も与えてくれないようだった。
さて次は一体……。
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