第18話 お客さん

「数と索敵はともかくとして……いざ敵が来たときに戦える魔物が欲しいな」


 1万の魔物をテイムした恩恵により、今の俺はそれなりに単体でも戦うことはできる。

 それこそ並の冒険者や騎士の隊長クラスよりは強い自信があるが、それでもここは森の奥地だ。周辺の魔物のことを考えただけでももう少し戦力は必要だろう。

 それに暗殺を考えているであろうビッデルの対策も必要となると、それなりの戦力は手元に置いておく必要もある。


「暗殺を警戒しながら強い魔物……育てたほうが早いか……?」


 ゴブリンがホブゴブリンになったように、新たにテイムした魔物たちも強くはなっていくだろう。その中で見込みがありそうなのを手元に……。

 そんな事を考えていると俺のもとに二つ、お客さんがやってきた。

 手紙を持った鳥型の魔物と、おそらく使者としての役割を持った精霊だ。


「……やけに早いな」


 この場所を捕捉してくる相手が現れるのはもっと後かと思っていた。

 今このタイミングで現れる来客が良いものであるはずはないと思いながらも、暗殺を考える相手が事前に便りをよこすとは思えない。

 じゃあ一体……。


「とりあえず見るか」


 精霊は後回し。というか見るからに時間に余裕がある様子だ。

 遠慮なく鳥の方に近づき手紙を開く。

 すると……。


「……ミリア様か」


 同じテイマーということで何かと世話になった王女様だった。

 だが同じテイマーというのがそのまま、彼女にとって王宮での生活を良くないものにする理由になってしまっていたのだが……。


「わざわざテイマーと名乗りさえしなければ普通に王女として生活出来たというのに……」


 ミリア様の扱いははっきりいって下級貴族……つまり王宮内における最下層と同じようなものになっていた。

 理由は明確。すでに俺の代では、宮廷テイマーが国にとってお荷物として軽視されていたからだ。

 だというのにミリア様は俺に色々と便宜を図ってくれ、代わりにテイムの技術を教えろと近づいてきたのだ。それこそ王家の威光を存分に発揮して……。


「結果的にこんな手紙を出さないといけなくなるとは……」


 我が家は持っている財産の問題である意味ではミリア様に守られながらもミリア様を守る役割を果たしていたんだろう。

 今のミリア様は王宮で完全に孤立したらしい。

 内容は王家としての謝罪と、なんとか戻ってきて欲しいという嘆願だった。

 だがとてもじゃないが王国関係者には見せられないような過激な文言も記されている。


「よほど信頼できる使い魔だったんだな……お前」


 撫でてやると目を細めて頭を押し付けてくる。よく慣れていて可愛い子だった。

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