第314話 セーバリア学園都市国

 では、サリーさんにセーバの街の商業ギルド長の席を譲ったルドラさんは、どうしたかというと……。


 私のところに来ていたりするんだよね。


 正確には、私が新たに治めることになった港湾都市バンダルガの商業ギルドへだけど。


 秘書のダミニさん、元セーバの街の自警団団長でルドラさんの奥様でもあるアディさんも一緒だ。


 同時に、商業ギルド・バンダルガ支部は商業ギルド本部となり、ルドラさんは商業ギルド代表となった。


 商業ギルド本部は連邦の首都ラージタニーであるべき?


 実は、今回の帝国での鉄道建設に伴い、商業ギルドは連邦最高議会から離れ、独立した組織としてやっていくことになったんだよね。


 連邦国内では商業活動には無くてはならない商業ギルドだけど、正直王国や倭国での影響力は弱い。


 これは他国では商業ギルドの必要性がないってことではなくて、連邦の影響下にある商業ギルドを迂闊に自国内で自由にはできないっていう王国や倭国の政治的な判断が大きいんだよね。


 商人の活動は国境をまたぐことも多いから、連邦の商人達にとっても商業ギルドが中立な立場で国に縛られずに運営されるのは、それほど悪い話ではない。


 特に最近の商業ギルドは、通信、銀行という商売に必要不可欠なインフラを担っているからね。


 お金と情報のやり取りが、新たに加わる帝国も含め世界中で自由に安全にできるようになるのなら、いっそ独立させてしまった方が連邦にとってもプラスだろうってことになったみたい。


 で、どこの国からも文句が出ず、一番他所からの影響が出ない所ってことで、商業ギルドの本部は私の国に置かれることになった。


 なんか、私の国が前世のスイスみたいになってるね。


 正式名称、セーバリア学園都市国。


 政治的に中立不可侵を宣言し、学ぶ意志のある者を国籍、性別、年齢、身分、魔力量、財力に関係なく、平等に受け入れてくれる国。


 勉強は大変だけど、一定の成績さえ収めていれば、生活は全て国が保障してくれる。


 今までは様々な事情で学ぶ機会を得られなかった人達が、学園都市の噂を聞いて世界中から集まってきている。


 今は新たに作る学園や街の建設で仕事はいくらでもあるから、入学希望でやって来た人たちの大半はそれらの手伝いをしつつ入学試験の準備に勤しんでいるところ。


 いや、入学試験はやりますよ、当然。


 これはセーバの街のセーバリア学園と同じ。


 入学試験のための予備校みたいな場所は既にあって、そこでは入学試験に必要な読み書き計算などを無料で教えている。


 だから、今まで全く学問に触れてこなかった貧しい人達でも、頑張れば入学試験にはパスできる。


 そして、学園で一定の成績を収め続ければ、生活を保障された状態で更に高度な勉強も続けられるし、クラスが上がるごとに待遇も良くなっていく。


 ある意味、コネも財力も無い貧乏人が努力次第で平等に成り上がれる仕組みともいえる。


 だから、集まってきているのは純粋に学問をしたいって人ばかりではなくて、いわゆるセーバリアン・ドリームを夢見て来ている人も多い。


 勿論、集まって来ているのはそういう立身出世を夢見る人達ばかりではなくて、各国の貴族や豪商、その子弟なんかもかなりいるみたい。


 そういう人達は当然最低限の読み書き計算はできているわけで、恐らく入学自体は問題無い。


 もっとも、彼らの狙いはそういう基本的な学問ではなくて、より高度な、もっとはっきり言えば、セーバの秘匿技術に関する知識だったりする。


 その中でも特に注目されているのが、マリアーヌ女帝陛下にも条件で出した魔法言語の発音に関する知識。


 この知識があれば、神殿の石板を使うことなくあらゆる魔法を習得することができる。


 そして、もう一つ。


 それは闇魔法を使った魔法増幅法。


 1MP以下の魔力で闇魔法(割り算)を使えば、少ない魔力で大魔法が使えるっていうアレだ。


 発見した当時は、社会に与える影響が大き過ぎるということでお祖父様に止められた技術だけど、もう大丈夫そうなので解禁した。


 私が前世の科学知識も踏まえて開発した各種魔道具は、極少ない魔力で大魔法に匹敵する効果をもたらすものも多い。


 精密な魔力操作、魔法に対する正確な理解によって、同じ魔力でも起こせる現象は全く違ってくることも証明された。


 魔力至上主義は鳴りを潜め、単純な魔力量のみでその価値を測るのは愚かであるという考えが一般的になりつつある。


 こんな御時世なら大丈夫かなぁってことで、私のように魔力の少ない人でも、工夫次第で大魔法も使えるんですよって事を正式に公表してみた。


 今までにも、私の使う魔法って魔力量的におかしくない? とか、あんな魔法をどこで覚えたの? とか、不審には思われていたんだけどね。


 それを今回正式に認めた上で、その知識や技術も教えますよって宣言した訳で……。


 それはもう、入学希望者殺到ですよ。


 まぁ、もっとも、この2つについてはセーバリア学園でも研究クラスで初めて教えられる内容だからね。


 入学したての学生に、ホイホイ教えるような内容ではない。


 どちらも扱うには高度な知識と技術が必要だし、悪用された場合の危険性を考えれば、高い倫理観も必要だ。


 魔法言語を理解し自由に発音できれば、新しい魔法の作成も可能になる。


 精緻な魔力操作と闇魔法を極めれば、魔力量に関係なくいくらでも魔法が使えるようになる。


 流石に、誰にでもってわけにはいかないからね。


 それでも、基準さえ満たせば、それがたとえ外部の人間であっても、その技術は教えるつもり。


 だって、生まれ持っての魔力量や生まれた土地の石板に依存した現状では、これ以上の魔法文明の発展は望めないからね。


 この世界では最先端と言われるセーバの技術だって、前世の世界を知る私の目から見たら全然だ。


 そもそも“この世界”だって、私に言わせればオーストラリア程度の大きさの小さな大陸に過ぎない。


 この海の向こうには、こことは違うもっと広い世界が広がっているかもしれない。


 そこにはここよりずっと高度な文明があって、そこの人間がある日突然この大陸に攻め込んでくるなんて可能性もあるのだ。


 前世の歴史はそうだったしね。


 それが杞憂だったとしても、いずれは海の向こうに何があるのかは確かめてみたいと思うし、そのためにも今以上の技術の発展は不可欠だ。


 せめて飛行機くらいは作ってもらわないと、気軽に海の向こうへなんて行けないからね。


 そのためにも、学園都市にできるだけ優秀な人材を集める。


 各国がいがみ合ったり牽制したりするのではなく、一致団結して技術協力できるような土台を作る。


 海の向こうにまで目を向ける人が増えれば、この世界での4ヵ国の優劣なんて、所詮はカタツムリの頭の上の話だって皆が気づくだろう。


 そうなると、まずは飛行機の開発か……。


 あっ、でも、飛行魔法とかも夢があるね!


 学園都市が正式稼働したら、そちらの研究もやってもらおう。


 夢が広がるね!

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