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「おはようございます」
「夢の中でおはようございます言う人、いる?」
「いやまあ、わたしにとっては夢の中のほうが、現実なので」
「漫画は?」
「描き終えた。この前のは渡してきたよ。仕事はもうないです。ゆっくり寝ていられますねえ」
「だめだよ。ちゃんと起きなきゃ。眠りから覚めなくなってしまう」
「それでいいとわたしは思ってるよ。そろそろ、普通に生きるのがつらくなってきた」
「なんで。漫画家として売れてるじゃん」
「私が描いているのは漫画じゃなくて絵だよ。夢で逢ったほんとのことを、描いてるだけ。わたしは落描きしてるだけ」
「いいじゃん」
「よくないよ。まっとうに漫画家を目指しているひとたちに、失礼かなって」
「じゃあ、漫画家やめたら?」
「それだと、夢で逢ったあなたたちのことを、描けなくなる」
「むずかしいね?」
「だからね。毎日が。つらくなってきたの。もういいかなって。起きて夢のことを忘れるのも、なんか微妙だし。やっぱり、わたしは。夢と幻想のなかにいたい」
「そっか。がんばったね。いままで」
いみもなく。
涙が流れる。
夢の中でも、泣けるのだと、なんとなく思った。
「わたし。むかしから、夢の中のことを。みんなのことを。誰に喋っても、わかって、くれなくて。それで」
自分で、描くしかなくて。
でも。
いくら描いても。
夢と幻想のなかに。
行けるわけではなかった。
「じゃあ、もう、休もっか。いままで、おつかれさま」
夢と幻想に抱かれて。
このまま。
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