頬
_冷たい
お父さんとお母さんが死んだ。
病院の霊安室で今朝見送った2人の青白い顔を見る。指を触っても頬を撫でても声をかけても反応しない。
目は閉じたままで。いつもの笑顔がかえってこない。
「君のご両親で間違いないかな?」
「……はい」
残酷な質問。でも必要なことだった。
中学生になって部活が始まって、私の休日は消えてしまった。唯一日曜日は休みだけれど、前日のハードな練習がおをひいて布団から出たくなくって。
家で過ごそうかと提案した両親を見送った。3人で映画を見に行く予定だったのだ。私のせいで2人が楽しみにしていたものを止めさせることはしたくなかった。
お昼頃、無機質な電話の音がなる。
葬式はつつがなく終わった。叔母が手助けしてくれたこともあり、私が無気力になってのろのろと支度していても全て終わった。
保護者の引き取り手は叔母。お母さんの妹で、昔はよく遊んでくれた。独身できっちりした人。
_非科学的なことを嫌う人。
1人で遺品を整理しながら近くによってきた「見えないモノ」たちに話をする。
「私、ここから引っ越すの。遠いところに。だからもう会えないの」
3人でも広かったのに、1人じゃあ広すぎる。
パンダも置いてくことにした。どこで遊んできたのか、それともパンダの特性なのか黒の汚れは広がっている。
引越し当日。叔母は時間通りに私をむかえにきた。
知らない車の匂いが鼻をさす。
車から家を見上げた。窓に幾人も見覚えのある姿がうつる。苦しくなって俯いた。
高校生になった。
_私はまだ、生きている。
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