第3話老人

とある山奥に爺さまが住んでいた

この爺さま、若者をからかうことが趣味だった

ある秋の夕暮れ、独りの若者が爺さまの元を訪れた

「ご老人、お願いがあります。どうかこの世界の謎についてお聞かせください」

老人はよいカモが来たことを喜び、答えた

「若者よ。この世界は8という数字で表される。なぜだが分かるかな」

「分かりません。私には難しすぎます。賢老であられるあなたにしか分かりません」

「若者よ、教えてしんぜよう。世界はどこまでいっても果てしない。

8という字をグルグル何回もなぞっても、結局8にしかならん。無限地獄なのだよ。

この世は」

「おお、なるほど。世界は果てしなく、どこまでも続くということですね」

「さよう。だから世界の謎などというくだらないことを考えるよりも

バイトに励みなさい」

「ご老人、感激しました。私はこれからピザの配達人として、精進してまいります。」

「ところで、若者よ、私の貴重な時間を費やしたのだ。いつもの礼をたのむ」

「分かりました」

と若者がいうと若者はかたわらから売れ残ったピザを差し出し、お礼をした。

老人は嬉しそうにピザをほおばりながら、お茶をすすった。

若者はというと、バイクで帰る途中、無限地獄のような不毛なやりとりを

思い出し、苦笑いしながらつぶやいた

「今度はあの老人をぎゃふんと言わせる謎をもっていこう。楽しみだ。」

老人と若者、お互いにからかうことが趣味なのである


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