第15話 もっとるか!

 もったいないので、細川の頼んだ料理を三人で平らげる。一人で食べるつもりであった彼女は悲しそうにその光景を見ていた。


「ちょ、ちょっともう無理でござるよ・・・・・・・」服部もすでに人並み以上の量を食べている。とても女子高生の食べる量ではなかった。


「じゃ、じゃあ私が・・・・・・・!」細川が服部の残したおかずに手を伸ばそうとする。


「だから、あかんって!!」俺は細川の厚みのある手をパチンと叩く。今度は恐ろしい形相で睨みつけてくる。やはり、食い物の恨みは厳しいようだ。「あんた、痩せたいんだろ!」ひるまず俺は手を押しのける。


「は、はい・・・・・・・・」急にシュンして下を向く。


「ふん・・・・・・・・」俺は腕気味をして椅子の背もたれに体重をかけて、ため息をつく。どうした物か・・・・・・・、本人は運動が嫌いだから糖質ダイエット・・・・・・・、って絶対無理やんけ!やっぱり、服部の言う通り運動をさせるしかない・・・・・・・・、走らせるか・・・・・・・、いや膝壊れるな・・・・・・・・、筋トレ・・・・・・・・。


「なぎさ殿、どうしたでござるか」服部が沈黙を続ける俺を不思議に思ったようである。


「水泳・・・・・・・・・、水泳だな!」膝に負担を掛けずにダイエット・・・・・・・・まさに、水泳が最適だと閃いた。


「えっ!す、水泳ですか・・・・・・・・・」細川は顔を引きつらせてその言葉を口にする。


「うん?どうかしたか」なぜそのような顔をするのか解らなかった。


「私、太ってから水泳の授業はずっと休んでいるんです・・・・・・・・、だから水着も・・・・・・・・」持っていないって言う事か。


「その頃に戻れるぐらい頑張れば、水着もいいぐらいになるだろう。頑張ってやってみようぜ」俺は片手でガッツポーズをしながら彼女の気持ちを刺激する。


「で、でも・・・・・・・・」細川はそれでも乗り気ではないようであった。


「部長達も誘ってみるでござるよ。しかし、なぎさ殿はビキニとかもっているのでござるか?」服部はニヤリと笑う。


「もっとるかー!!」俺は立ち上がって突っ込んでみた。きっと、細川の気持ちを少しでも楽にさせようと気を使っているのであろう。


 それでも、細川の顔は緩む事はなく強張っていた。

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