サプライズ結婚式⑦

 幸せな貰い涙を湛えた人々に囲まれた会場は、とても温かい雰囲気に包まれている。

 司会者に促され、一度小さく鼻を啜った男が立ち上がり、マイクの元へと歩み出た。


「それでは、新郎、タケル様のご友人の皆さまからの、お二人へのビデオレターをご紹介させていただきます」


 司会の紹介に合わせ、スーツの男が緊張した面持ちで短い髪の毛をかいて一言挨拶した。


「えー、山下さんとは会社の同期なんですけれど。明日香さんとは遠距離恋愛をされていた期間が長いということで。普段の山下さんがいかに明日香さんについて惚気のろけてきたかをお届けれきればと~」

 へらりと人のよさそうな笑顔の友人は、汗をかきかきそう告げて礼をした。


 アナウンスの注意喚起の後に暗くなる広い室内。大きなスクリーンに映像が映し出される。


『山下タケル恋物語』


 スクリーン一杯にそうタイトルが映し出されると、来賓席からは微笑ましそうに笑い声が零れた。



 遠距離恋愛の切なさと、想いを歌う耳触りの良い音楽に乗って、スクリーンには友人からのメッセージとありし日のタケルの姿が映し出される。


 普段は見つめる姿に全く違和感などないのに、今見ると時間の流れを感じる、今よりも若い姿。

 映像に混じる、その当時の二人の思い出の品や写真。

 タケルが貸し出したそれと、その頃の、懸命に仕事と戦っている明日香が知らないタケルの姿が映し出された。


 一秒でも長く声を聴きたいと思った日々。

 電話の向こうで見られなかった姿がそこにある。

 一秒でも側にいたくて、無理なスケジュールでも会いに行った日。

 帰りたくないと泣きたくなった前の、後の、彼の姿がそこにある。


 共に過ごせる週末に向けて、タケルがどれだけ楽しみにしていたか。

 会えた後に、嬉しそうに写真を見せられて惚気られたなんて。

 悪びれなく友人たちが映像の中で、笑いを誘い、おどけながら暴露していく。



 明日香が照れと嬉しさが混じりあった視線を向ければ、タケルはばつが悪そうに照れ笑いを返す。明日香は絡めていた腕をぐっと抱きしめた。


 会いたい、側にいたい。長い長い間、そう思っていたのは自分だけではない。

 お互いに同じ気持ちで、会えない日々を乗り越えてきた。

 そして今、二人でこの日を迎えている。


 二人の前に立ちはだかった困難は、今まで多すぎるくらいあった。

 その度に、支え合い、励まし合い、お互いを想いあって、一緒に乗り越えてきた。

 そしてそれを、今日この日に、ようやく多くの大切な人の前で誓えたのだ。


『いつまでも、おしあわせに』


 拍手と笑いを残し、ビデオレターは多くの祝福と大事な思い出を届けて終わった。

 今までも、これからも、宝物の思い出を増やしながらこの幸せが続いていく。

 いつの間にかお互いの肩を寄せていた二人は笑い合った。

 これからもずっと二人で幸せでいる。疑う余地もなく当たり前にそう信じている。



※※※

文字数がちょっとオーバーですみません、削れなかったの…。

次は、砂糖界のプリンセス綾束乙さま♡です。うへへ。

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