『謹賀新年! 薄紫色の書き初めダイナミック!』
「ごめん、ラグ!急に降ってきちゃって。手伝わせてごめんね」
異世界の日本で見つけた僕の姫君、
結婚の約束をしたものの、まだ準備は半ば。咲良が僕の世界に来てくれるまでは、魔法で咲良の元を訪れること、今まで通り一日10分、いいや、努力の結果めでたく限界を突破して、一日30分の逢瀬を重ねていた。
咲良と30分も一緒にいられるだけで、僕は随分幸せだと思っていたけど。10分では見えなかった咲良の現実が、もう少し見えるようになったような気がする。
「きゃー、濡れちゃう」
眉を顰めながら物干し場に向き合っている咲良が僕に手渡す洋服を受け取って、バスケットにいれる。重なり合うシャツの間に、ひらりと薄く小さな布が挟まっている。気を引かれてそれを摘みあげると、それは白い薄布にレースとピンク色の刺繍が施された、彼女のパンティーだった。
僕は慌てて顔を背ける。何も見てない。何も見てない。そっとシャツの間に戻してバスケットに溜まった衣類の上に投げ入れた。
何あれ、あんなの着るの咲良。こんな薄くて、ちっちゃい、あんなの。
いやいやいや、淑女の下着なんて。ここは紳士として決して見た事を悟られてはいけない。
しかし、あろうことにも投げた洗濯物はバスケットの縁に引っかかり、薄い布地は中には入らずにひらりと傍らの床に落ちた。
………拾うべきだろうか。
次に渡された洗濯物を俯いたまま受け取りバスケットに入れながらも、視線はどうしてもその薄布に釘付けになってしまう。
ベランダのすぐ脇の床に置いたままでは、せっかく洗ったのに汚れてしまう。
でも、拾うの?咲良の下着を、僕が?
寒い季節であるにも関わらず、汗が滲んできた。
僕は、また咲良から無言で洗濯物を受け取る。どうかこの作業が永遠に終わらずに、こちらを見ないでほしい。
あんなにも咲良に僕を見て欲しいと願い続けたのに、見ないで欲しいと思うのはこの十年で初めてだった。
戸惑いながらただただ洗濯物を受け取る。無造作に掴んだその洋服は、不自然に盛り上がっていた。
視線を手元に降ろす。
尖るように丸みを帯びた見慣れない形をしたそれは、床で僕の視線を釘付けにする薄布と揃いのデザインで、僕はそれを見たことがないのに何かを悟ってしまった。
要するに、これはコルセットのようなもので。彼女の素肌の一番近くに纏われている、やっぱり下着だ。
わざとなの、咲良。ねえ、これわざとなの。
初恋の彼女に縋ること十年。逢えるのは毎日10分。それもここ数年は避けられていて。ただ彼女を諦められずにいた僕には、自慢できないほど全く色事の心得なんかない。
咲良の攻撃が刺激的すぎて、もうやられっぱなしだった。
「あれ、ラグどうしたの」
咲良は洗濯物を取り込み終わった物干しから身を翻して、僕の隣まで歩み寄り、そしてそれに気づくと身を屈めた。何も気にする様子なく落としていた下着を拾い上げてバスケットに入れる。それから、ひょっこりと勢いよく立ち上がり僕を見た。
隣で不思議そうに僕を見上げる咲良の姿に、そわそわして視線が合わせられない。
近くに立った彼女からは、さっきの洗濯物と同じいい匂いがしていて。
「ありがと」
無邪気にふんわりと笑う顔は、可愛くて。
胸の中で鼓動が暴れていた。
その柔らかそうな唇に触れたい。触れ合わせて、舐めて…それから、……。
そっと顔を寄せた時に、魔法はとけた。
魔法の逢瀬の時間はまだ30分。それが限界。
僕はもっともっとこの記録を伸ばすべくその日から研究に勤しんだ。
-------
『ref. 夢の世界と理想と現実』
ラグは異世界の王子様27歳ピュアボーイです。咲良は26歳普通のOL。
咲良は、後で下着を扱わせた事に気付いて焦ったでしょう(笑)
「まあいっか、変なのじゃなかったしセーフ」
ワードを健全に使ってやる。一つくらいは薄紫仕立てにするか。でも全体はそこそこエロいを目指しました(笑)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます