(三)

 四年後、郁雄は野火止美術大学を卒業した。恵美はその一年前に専門学校を卒業し、WEBデザイナーとして就職していた。

 そして春になり、事態は急変した。恵美の方ではなく、郁雄の方にそれは起こった。ゴールデンウィークに入る直前のことであった。

 決して裕福ではなかったが、会社員の父と専業主婦の母を持つ郁雄の家族は、いわゆる中間層という経済的なカテゴリーに属していた。郊外に一軒家を構えており、父親は都市部へ中堅企業の中間管理職として通勤していた。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る