(二)‐10

 郁雄は第一志望の野火止美術大学に合格した。恵美も自分のことのように喜んでくれた。でも郁雄は彼女と一緒に合格したいと思っていた。もちろんそんなことは口に出して恵美には聞かせるわけにはいかなかった。

 合格発表があった二月下旬には、恵美の日常はすでに入院生活となっていた。病状が進んでしまったらしかった。

 彼女の高校の卒業は、各教科のレポートを提出することで無事認められた。しかし大学への進学は叶わなかった。

 春になり、大学に入学した郁雄は、毎日学科と実習、それに創作活動で忙しかった。なんとか時間を作って、恵美のお見舞いにも行った。この頃になると、彼女の髪は肩甲骨と腰の間くらいまで伸びていた。


(続く)

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