(一)‐2

中からは返事がなかったが、七音は静かに横にスライドする扉を開けて病室に入った。

「こんにちは、お体はいかがですか」

 やつれた姿の若者が横たわるベッドに近づきながら七音がそう言うと、若者は顔を七音の方に向けてややほほえんだ。

「今日はお元気そうですね」

 そう言うと七音は、紙袋から新聞紙に包まれた物を取り出した。新聞紙をはずし、茶紙、薄紙を外して中から絵を取りだした。そして「ご依頼の物はこちらですね」と絵を渡した。

 絵には病室で寝間着にガウン姿の女性が描かれていた。


(続く)

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