偶然助けた学校一の美少女がぐいぐい迫って来て超絶甘党攻撃でビターな俺の心を溶かしてくる件について
小村 イス
第1話 たまたま美少女を助ける
皆は『ぼっち』という言葉にどんな印象を持っているだろうか。
根暗、陰キャ、いじめられっ子等のどちらかというとマイナスの印象を持っている人の方が多数いるだろう。
しかし、それは単に独断と偏見に過ぎない印象だ。
最近では『ぼっち』も流行している。
一人カラオケ、一人焼肉、一人旅、まだまだたくさんあるだろう。
つまり、俺が何を言いたいのかというと『ぼっち』は皆が思っているほど印象は悪くない。一人の時間を自分の好きなように有意義に使えるんだ。時間に規定がないこと以上に最高なモノは無い。
そう。俺は一人の時間、『ぼっち』をするのが大好きなのだ。いや、なんか寂しいから言い直そう。俺は一人で自由に自分の時間を過ごすことが大好きなのだ。
――キンコンカンコーン。
放課後のチャイムが校内に鳴り響く。部活に行く人、友達と仲良く下校する人、学校に残って勉強をしたり話をする人、黙々と一人で下校する人。色々な人がいる。
俺、
俺は何でも一人だ。登下校、休み時間、昼食、全て『ぼっち』だ。一人の時間は実に良い。何も気を遣わずに済む。俺は気を遣うことがあまり好きではない。
気を遣うということは自分で自分に束縛を掛けているということだ。もう少し簡単に言うと、自分の自由を制御している。つまり自分の自由を自身が奪っているということ。なんとも馬鹿馬鹿しいことだ。
そんなことをしているとストレスが溜まっていく一方だ。
だから俺は今日も一人で早く家に帰ってゴロゴロする。そう思っていた。
いつも通り黙々とイヤホンを付けてお気に入りの歌を聴きながら帰っていると後ろから声が聞こえてきた。
「翔〜、おーい、翔〜!」
警察官の制服を見に
「龍星か。今日も巡回中か?」
「あぁそうだよ。今週は俺が巡回の当番だから今日もだ」
「大変なんだな警察官は。でも、何かトラブルにはまだ遭遇してないんだろ?」
「一昨日も昨日も平和だよ。この流れで何も無いといいけどな~」
龍星たち警察官が街の安全の為に巡回してくれているため平和が続いている。警察官というのも大変だなと思いながら、俺は龍星と一緒に歩いている。
今週は毎日会うため、こうして一緒に歩いている。周りからは「イケメン警察官がいる」との声が四方八方から聞こえてくる。これがイケメンとモブの差ってやつか。
いつも通り慣れ親しんだ登下校の道を歩いていると、俺達はある現場に遭遇する。
「なぁ姉ちゃんよ、君JK?すっごい可愛いね」
「やめてください。手を離して」
「んなこと言わずにさ、俺と楽しいことしない?きっと満足させて上げれるからよ~。後悔はさせないぜ」
どうやらナンパ現場に遭遇してしまったようだ。
見るからに不良と思われる金髪の男と、恐らく女子高生が何やらもめている。
……ん?
よく見るとうちの高校と同じ制服を着ていた。顔が見えず、後ろ姿しか見えなかったので誰とは判明できない。
「ちょっと……本当に……離してください!」
女子高生が力強い声を上げて、相手の手を薙ぎ払う。
「……ッチ!この小娘が!いいから黙ってついてこい!」
「……キャッ!!」
女子高生が悲鳴を上げると、お婆ちゃんの荷物を運んでいた龍星が戻ってきた。
「ピー!ピピ―!そこの金髪の男性、その手を離しなさい」
男はつかさず、握っていた手を離して慌てた表情を浮かべながら逃走した。
ふん、愚か者め。龍星から逃げられるはずもあるまい。あいつは高校時代、全国陸上大会百メートル走の優勝者だぞ。その俊足からは絶対に逃れられない。
まぁ、あの男が捕まるのも時間の問題か。
俺は最後龍星に気をつけろよとだけ告げて家に向かって歩き出す。
「阿良田……さん……?」
俺は名前を透き通るような声で呼ばれた方を振り向く。
「……矢吹?」
なんと、ナンパの被害にあっていたのはクラスメイトの
赤茶色に染まった髪の毛は肩まで伸びたセミロング。大きな瞳にスッとした綺麗な鼻筋、柔らかそうな唇。端麗な顔立ちをした超絶美少女だ。
学校一の美少女と称されるほど評価が高く、男子の間では『琴ファンクラブ』という組織が設立してあるくらいの人気者だ。
そう、俺とは全く無縁の住む世界が違う人間だ。
「まさか、わざわざ警察官を呼んできて私を助けてくれた……?」
「いや……それはたまたまで……」
「ありがとうございます!本当に助かりました」
「まぁ、無事なら良かった」
「阿良田さんのおかげです。あっ、すみません。私これからバイトあるのでこれで失礼します。このご恩はちゃんとお返しします」
「いや、そんな。別に恩返し何て……」
矢吹は俺の話を聞かずに走って行ってしまった。
いや、本当にたまたま現場に鉢合わせて、たまたま一緒にいた警察官の従兄弟が助けただけで俺は何もしていないんだが。
俺はたまたまにたまたまが重なって、たまたま学校一の美少女を助けてしまったのだ。
偶然は重なる、まさに
矢吹の恩返しは一体どんなことだろうと考えたが、あまり深追いせず軽い気持ちで考えた。期待なんかしていないからな。
そして家で自分の時間を過ごしたいと思った俺は、時間を無駄にしないよう少し足早で帰って行った。
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