待ちきれない小さな紅葉

雨月紫陽花

第1話 開演

ぎいいいいい、、、、、、、、、、、、、、、、

「おや、こんな雨のなか珍しい。いらっしゃいませ、どうぞこちらをお使いください」

土砂降りの雨の中、いきなり扉を開けた私を店主は嫌な顔せずタオルまで渡して出迎えてくれた。

「びしょ濡れですみません。明かりが見えたもので、少しやすみたくて」

「いえいえ、お気になさらず、構いませんよ。こんな雨で閑古鳥が鳴いてたものですから、こちらとしては大歓迎です。ちょうど話し相手がほしかったところです。」

どうやら、気さくな店主のようだ。いきなり入ったが、もしかすると当たりの店かもしれない。店内は、落ち着いたクラシックが流れ、照明も明るすぎることもない。

「さて、ご注文はいかがいたしますか?軽いものであれば、お食事も提供はできますが。」

「そうですね、、、。お腹はそれほどすいてもいないですし、ほんの雨宿りのつもりでしたので、オールドパーをハーフロックで」

「かしこまりました。少しすれば、雨もやむかと思いますよ。」

「いやぁ、助かりましたよ。駅から出たら急に降り出すもんですから、でもこのお店、初めて見た気がするんですけど、お店の感じからして、最近できたばかりじゃないですよね?ちょっと横道に入ってますけど、いつも通る道なので、気づくと思うんだけどなぁ」

「はは、まぁうちは小さな店ですし、基本的に夜だけですし、開けているのもまちまちなので、気づかれなかったのでしょう。」

「あ、すみません。悪い意味でいったわけじゃなく、、、」

しまった、せっかく良い店見つけたかとおもったのに、嫌な思いさせてしまったかも、、、。

「いえいえ、ほんとのことですから。さぁ、どうぞ」

慣れた手つきで店主は、グラスを私の前まで出してくれた。

「いただきます。」

飲みなれたウイスキーの味、変なくどさもなく、かといって何も主張がないわけでもないのが好きで、バーなどでボトルを目にすれば、注文するようにしている。

店主は、だれもがする瓶立てを試しながら、

「雨が止むまで、よろしければ、私の今までの人生で聞いたおかしな話でも披露いたしましょうか?」

おかしな話?変なこと言い始めたな、まぁ時間はあるしいいか。

「おかしな話?かまいませんよ。聞き役がつとまるかわかりませんが、どんな話ですか?」

「実はね、、、、、、。さとるさんという、あるサラリーマンの話なんですがね。」

店主は、落ち着いた静かな口調で語り始めた、、、。



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