未来ノート

鯨月いろ

第1話


――?



 ある日僕は、未来ノートを拾う。

学校の校庭で拾った。

 学校から帰る道中、内容を確かめてみる。


――How to use


 英語で書かれていた。英語か……めんどうだな――



How to use


This note is このノートは、未来の事象のみを書くことができる。


(――英語やめるの早ッ!)


このノートに書いたことが 未来に起こり得ない内容は、書いたそばから削除される。


起こった内容においては、翌日の日本時刻零時に削除される。


このノートに書き記すことができた未来の起こりうる事象に、ノートの持ち主が逆らった時、このノートは消滅する。



 ただの中二チックな落とし物にしては、手が込んでいる。ここまで書かれていると試してみてもいい気がした。

 家に帰宅する。ノートを机の上において考えてみる。

 我が家での平日の朝食は、ご飯と味噌汁。定番メニューだ。

土日になると、パン食になることもある。明日は平日だから、ご飯と味噌汁しかありえない。


明日の朝食はご飯と味噌汁


 軽い気持ちで書いてみた。

 シャーペンで書かれた文字は、当たり前の事象としてノートに書き記されたままだ。未来に起こりうる内容なのだから消えない。

 本題はここからだ。次に下の行へ書き足した。


明日の朝食はパン


 未来にない内容。消えるか?

 しばらく黙って観察する。何も起こらない。

――ふ、ふふふ。

期待してしまった。落し物が中二チックなら、それを拾った拾い主も中二病だったということか。自分で自分を笑ってしまう。

 期待していた本心を悟ってしまうと、悔しさがこみ上げる。

 句点(。)を補ってみた。それで何かが変わるとはもう思っていない。これはそう。諦めるためのケジメだ。


 はじめは句点を両方に書いていなかった。


明日の朝食はご飯と味噌汁。

明日の朝食はパン。


 書き足した。これで満足だ。アホなことはこれで終いにしよう。


明日の朝食はご飯と味噌汁。

·.·:.・...*.··.·:.・...*.··.·:.・...*


――!!!


――文字が消えた!?


句点を書き入れるや、文字はさらさらと秒で消えてしまった!


――未来ノート


「本物だ!!」

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