松山

街がにぎわいだ


祭りが通り過ぎて


伊予路に秋の香りが


ただよって来る


1人立ちよった


湯けむりの城下町も


セピア色に


そまってゆく


夕やけ空を見上げて


流れる雲に


こう問いかける


なあ、松山よ


俺はこの先


どこへ行けばいいのか


秋の夕暮れ


黄昏の街に


エレジーが


聴こえてくるよ



1人歩く


湯の町


ガス灯の灯りが


秋の夜を


物語るよ静かに


マドンナの長く


美しい髪が


あの頃の俺を


思い出す


手を取り合う


坊っちゃんとマドンナ(ふたり)を


見かけたときに


こう問いかける


なあ、松山よ


あの娘ともう


元には戻れぬのか


ケンカをした後


あの娘が


泣いている間に


俺は、あの部屋を出て


帰らなかった



大街道から銀天街へ


人の流れにのって


あてもなく行く


街は静かに


夜へと向かっている


街をゆく人たちは


家路へ向かう


俺は、足を止めて


星空を見上げて


こう問いかける


なあ、松山よ


もしも願いが


叶うのならば


もう一度


あの娘と


手をつないで


この街を二人で


歩きたい

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