Welcome to the Dead
江戸端 禧丞
第1話・終わりは突然に
薄暗く、不気味な広い空間がどこまでも続いている。バーゲンセールに並んでいるのかと思うほどの、長蛇の列、終わりが見えない。
それが何列もあり、男は首を傾げた。彼、小鳥遊《たか
なし》
そんな風に忙殺される日々を送りながら、突然起こったこの事態に頭の中は大混乱だ。見も知らぬ場所に、いきなり突っ立って何らかの行列にならんでいる。であれば寝た記憶はないが、きっとこれは夢に違いない、と理解した。身体が連日の残業で疲れていたのかも知れないと。
こうなれば夢とは言え、普段は特別何かに興味を持ったりしない貴之でも、もっと周りを観察してみようという好奇心が少し湧いてきた。まずは近くから──薄暗さが視界を悪くしていたが、よくよく目を細めてみると、前に並んでいるのは白髪で背中が曲がった、血まみれでヨボヨボの老人。ギョッとしたまましばらく固まっていた貴之だが、今度はゆっくり後ろを振り返った。そこに立っていたのは……視点が定まらず、ブツブツと言葉にならない何かをずっと呟いている肥満気味の男。そして、不意に貴之が見てしまったのは、その手に斧が握られている事だった。
貴之は腰を抜かして、砂利が敷き詰めてある地面にへたり込んだ。血だらけの斧に、気がおかしくなった様な男、血だらけの老人、一体どうして自分がこんな夢を見てしまっているのか。顔面蒼白になり立ち上がれないでいると、遥か前の方から、聞き心地いい男性の声が聞こえてきた。
「ぉーい、おーい、あれ?誰もいないのか?誰が座らせたんだ…ちゃんと立たせとけよなー……って、アレ???んんん?…アンタ、もしかして自分の名前言えるか?」
声の主は、白い着流しをサラリと着こなし、赤黒い羽織りを肩に掛けており、美しい妖精のような見目麗しい人物だった。最初は面倒臭そうな表情でやって来た彼だったが、貴之を一目見て首を傾げた。これは何なのかと思いながら、口を開く。
「ぇ…と、小鳥遊 貴之ですけど…」
「……あぁぁ…全く、イレギュラーじゃーんっ!!千年に一度の異常事態発令は恒例行事ってか!?何やってんだ死神共は……」
彼の言っていることの意味はサッパリ分からないし、自分が名乗った瞬間に突如として項垂れるのも意味が分からない。どうすればいいのかと男性を見上げていると、手を差し出された。
「ちょっと来い、俺は
貴之の中では、不思議な感覚がフワフワと行き着く場所もなく
「…あそこの列は、どんな人達が並ぶ列だったんですか?」
「あぁ、人間を殺した連中が並ぶ列だよ。で、その奥は動物、手前は殺された連中、この辺は自殺した連中、あとはまぁ…色々だ。死者が船の前で待たされてるのさ」
「──船、ですか?」
「そっ、生きてる人間はよく三途の川とか言うだろう?その川が、この先にある。アンタ、ホントは死ぬ筈じゃなかったみたいなんだけどな、ちゃんと死んでるヤツは、ここじゃあ口をきけない。行くべき場所に着いて、やっと口がきける様になるんだよ」
なるほど…と頷きながら、自分が死んだという事実には納得し切れないでいた。それでも、この薄暗い
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