第二話 「フリーズする、彼女」

今日も大学のカーリングサークルでカーリング場へとやって来た俺達。

「今日もテイクアウトが冴えるぜ」

ハウスの中に入ったストーンは全部弾き出す。

カーリングはパワーだ。

というのが俺の信条。

だが。

それを理解してくれるパートナーがいない。

今年こそはMDミックスダブルスの大会にエントリーしたいのに。


しかし、毎度毎度、俺が弾き出した後、俺の投げたストーンシューターに必ずぴったりと付けてくるフリーズしてくるヤツがいる。

雨宮あまみや、お前ホント、フリーズ上手いよな」

「えっ!?そんな事ないよ!?でもなんでだろ?古宿ふるやどクンのストーンに惹き寄せられてるみたい。古宿ふるやどクンって不思議だね」

いや、雨宮あまみや、お前の方がよほど不思議だけどな。

でもこれだけ毎回毎回ぴったりくっつけられると。

変に誤解をしてしまいそうだ。

雨宮あまみやは俺より背が高くて。

髪はさらさらで。

目はくりくりして大きくて。

美人、というよりカワイイという言葉が似合う。

それでも何故か浮いた噂が一つもない。

しかも身体つきが俺好みで。

出るトコ出ていて…。

いかん、いかん。

カーリングに不純な気持ちを持ち込むな。

「私は良いケドね」

…?

雨宮あまみやが何か呟いた気がする。


カーリング練習が終わって帰り道。

辺りはすっかり暗くなっていた。

雨宮あまみや、送ってくよ」

「あ、うん。ありがとう」

これは。

満更でもない様子。

「あ…あの。古宿ふるやどクン。これ、ちょっと早いケド、誕生日プレゼント」

「え!?オレ、雨宮あまみやに誕生日教えたっけ?」

「あ、えっと。友達に聞いたの」

「開けていいか?」

雨宮あまみやがこくん、と頷く。

中身は…。

え…。

所謂いわゆるAVアダルトビデオのDVD。

しかも最近オレが好きな女優の…。

「な、な、な、雨宮あまみやどゆこと?」 

「あ、うん。だって最近古宿ふるやどクン、その人のコト、気に入ってるみたいだったから」

いやいやいや。

友達にだってAVの趣味そんな事なんて教えないぞ!?

「な、な、なんでそんな事知ってるの?」


「あ、だってね。古宿ふるやどクンのgeegelゲーゲル検索その人ばっかじゃない?あ、ごめんね。前にホラ、好きなバイクの話聞いて、その型式がgeegelゲーゲルアカウントの暗証番号かなって思ったら当たってて。メルアドは知ってるし?あ、もちろん私が古宿ふるやどクンのアカウントでログインした後は古宿ふるやどクンのスマートフォンに通知行っちゃうからそれも消していて。あ、ほら。スマートフォン机に置いたまま授業中寝るの止めた方がいいよ?あ、あと、スマートフォンの暗証番号もgeegelゲーゲルと同じなのも不用心。あ、でも、私ね。古宿ふるやどクンが今は私以外の女性で処理しててもいいんだ。いずれ、私で処理してあげるから。あ、私違うよ?私、怖いヒトじゃなくて」


…もちろん充分に怖い。


だが、ふと思う。

これだけ俺の事を知っている雨宮あまみやなら…と。

「なあ、雨宮あまみや、俺とMDミックスダブルスのペア、組まないか?」

すると雨宮あまみやは…。


何故か泣き出していた。


いや、何故泣く!?


「嬉しい…ありがとう。ふつつかモノですが、末永くお願いします」


いや、違う。

なんだか凄く違う。


翌週。

雨宮あまみやは、MDミックスダブルスの申込み用紙と…婚姻届を持ってきた。


……。

うん。

どっちもサインはしても良いけど。

婚姻届は大学卒業して、就職して。

それから二人で出しに行こうな?







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