システム
部屋の前でエルと別れ部屋に入る。
肉体的疲労は感じないが、精神的疲労が酷い。
(今日はもとからダンジョンだけの予定だったし、もう寝るか。)
まだ日が傾きかけたばかりだが、今日はもう良いだろう。
佩いていた剣を鞘ごとベッド横の壁に立てかけ、防具も外して傍の床に置く。インナーは汗を吸って酷いので、脱いで他の洗濯物のところへ放り投げる。
ベッドに横になると疲れで瞼が重くなってくる。
(飯は明日の朝で良いとして、10時に集合だから起きるのは7時くらいで良いか・・・。)
明日のことを適当に考えた後、睡魔に抗わず意識を手放した。
◇
目を覚ますと、日が昇ったばかりのようだ。
「朝・・・今何時だ?」
上半身を起こしてメニューウィンドウを開くと、午前6時過ぎだった。この世界の日出日没がどうなっているのかはわからないが、日本とは違うのだろう。
とりあえず、まだ1時間は寝られる。
「ん・・・?」
途端、凄まじい違和感を覚える。何かがおかしいと感じたが、メニューに表示されている日時を見ても特におかしいところは無い。
手を見て、足を見て、床に置いてある装備を確認するが、何かが無くなっているということも無い。
(寝起きで頭が働いていないだけだろうか・・・?)
昔から朝は弱い方だった。それでも彼女たちがいたときは・・・。
(待て、何で俺は普通に寝て普通に起きたんだ!?)
今まではベッドに横になった時点で起床時間を設定するメニューが表示されていたはずだ。
だが、昨日は横になっても何も出てこなかったし、何よりも7時に起きようとしていたはずだ。もしシステムで睡眠を取ったなら設定時間よりも早く起きることは基本あり得ない。もしそれがあるとすれば、敵が襲来するなどイベントが起きたときだけだ。
いや、昨日は疲れていたし起床時間の設定を間違えただけかもしれない。確かめるのは簡単だ、もう一度ベッドに横になればいい。
しかし、もしも何もなければ・・・。5分ほど考えるが、行動しなければどうしようもないと考え勢い良く上半身を倒す。
・・・何も表示されない。背筋が凍る。
強張った体を無理矢理起こし、エルが借りている隣の部屋へと向かう。
「エル!起きろ!」
ドアを叩きながら呼びかけるが、一向に開く気配がない。
ダメ元でドアノブをひねると、予想に反してガチャリとドアが開いた。
「エルッ!」
部屋に入ると、ベッドに横になっているエルが目に入る。どうやら寝ているようだ。
「エル、起きろ。」
声をかけながら身体を揺らすと、ほどなくして目を覚ました。
「ん・・・おはよう竜馬・・・。もう朝?」
「あぁ、朝だ。」
「そう・・・で、なんで僕の部屋にいるの・・・?」
「・・・勝手に入ったのは悪いと思うが、それよりも昨日のことを思い出してくれ。」
「んー・・・特に何も・・・?」
こいつも俺と同じで朝が弱かったか。
「とりあえずこれでも飲んで目を覚ませ。」
いつもインベントリから切らさないようにしているコーヒーのようなものを取り出して渡す。
「ありがと。・・・うん、相変わらず苦いねこれ。」
「すっきりしたか?」
「おかげさまで。それで、昨日のことだっけ。」
「そうだ。昨日別れた後の行動は?」
「んっと、装備を外して着替えた後寝ただけだけど・・・?それがどうしたの?て言うかなんで部屋に入れてるの?」
「それは後で良い。寝るときはどうだった?」
「普通に横になって・・・あれ?何で寝たんだろ?」
「俺が焦っていた理由ももうわかるだろ。」
「うん、おかしいねぇ・・・。竜馬・・・アルが部屋に入れたのも同じなのかな。多分僕が部屋の鍵をかけなかったからだ。」
自分の拠点として登録した部屋は、借家や宿屋であれば部屋に入った時点で勝手に施錠されるようになっていた。厳密には外側からはシステム的に勝手に開くことができないようになっていて、内側からは制限が無いのだが。
それが外側からも開けることができてしまった。つまり、施錠がされていなかったという事になる。
つまりは、
「システムの制限が外れている・・・?」
システムが働かなくなったのか、システムの領域外に出たのかはわからないが、俺たちの身に何かが起きたのは確実だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます