最奥
「なんか簡単だね。」
「一撃で倒せるうえに数も多くないからね。」
「狼みたいな掠種しか出てこないってことは、そこまで難易度の高くないんじゃないか?」
今まで戦ってきたものの中で狼の強さは単体だと弱い部類に入る。奴らの強さは群れを構成する数で決まり、多ければ多いほど連携が厄介になる。また、時々指揮を執るのに特化した個体も存在し、群れの中に一体存在するだけで脅威度が跳ね上がるが、本体は弱いため遠距離で仕留めることが可能ならば対処は容易となる。
今進んでいるダンジョンでは3体から多くても5体のため、俺とエルがいれば二人だけでも余裕で戦えるレベルだ。そこに遠距離支援のフェルズとバフをかけてくれるメイトに、攪乱して統率を乱すストレがいればこの3倍までは問題なく対処可能だろう。洞窟の幅を考えれば多くとも10体も出てこられないとは思うが。
「5体出てくると少し難易度は上がるだろうけど、それでもあのデカい猪一体よりは格段に弱いしね。初見のあいつは手ごわかった・・・。」
「そういえばさ、掠種って種族名とか無いのかな?なになにみたいなのーとか呼んでるけど、そこらへんストレちゃんとかどう考えてるの?」
「普通に狼とか猪とか龍とか呼んでるけど、あたしたちもそれに見た目の近い生き物の名前で呼んでるだけだよ。」
「待って、龍とかいるの!?」
「戦ったことは無いけどね。討伐記録は二件しかないし、そもそも現れること自体殆ど無いから出会ったら事故みたいなものよ。」
龍か・・・いつかは戦ってみたいと思うが、全く太刀打ちできずに死ぬだろうな。
「もし戦うことになるとしたら、レイドボスか何かになるのかな?街に襲来!とかやってきそうで怖いね。」
「一つのパーティで戦うような存在では無いでしょうね。ですが、強大な敵も物語終盤では素材のために作業的に狩られるのがゲームと言うものでしたよね。」
「そういうお約束も半ダイブ型まででほぼ駆逐されちゃったけどね。フルダイブだといくら数値上で強くなっても実際に体動かすのは自分だし。」
「ま、実際に戦うとしてもまだまだ先だろう。まずはこの先にいるボスとやらを倒すぞ。」
「ですね。ストレさん、ここのボスは?」
「あの狼の特化個体よ。あたしたちなら余裕でしょ。」
「油断大敵だよストレちゃん。私も大丈夫だとは思うけど。」
このように会話をしながら歩いているのは、敵が出現しないとわかっているからだ。少し前に休憩所と思しき小部屋に入った際、ストレからこの先のボス部屋までは敵が出ないと教えてもらっていた。
「猪複数体とかじゃなくてよかった。・・・さて、あの扉がボス部屋か。」
「準備は先程済ませましたし、直ぐに突入しますか?」
「それで良いんじゃない?早く終わらせて帰ろうよ。」
ここまでダメージを受けていないし、心力も殆ど使っていないため準備と言っても装備がガタついていないか軽く確認するだけだった。装備の耐久値はいつでも確認できるが、普通に使っている限り極端に削れることは無い。
「よし、行くか。開けるぞ。」
扉を開くと、30メートル四方の部屋だった。奥に巨大な扉があり、その前に10体ほどの狼の群れが確認できる。
「【遠見】」
【遠見】を使い確認すると、真ん中に統率個体らしき黒い体毛の狼がいた。あれを倒せば残りは烏合の衆だ。
「フェルズ、行けるか?」
「この距離で相手が動かないなら、外す方が難しいですよ。」
動かないなら先制攻撃だ。卑怯と言ってくれるな、早く終わらせて寝たいんだ。
「行きます。」
フェルズが弓を構えて宣言する。
弓を引き絞っていた右手を離したとほぼ同時、【遠見】で見ていた統率個体の脳天に矢が炸裂し首から上が弾け飛んだ。
「命中!行くぞ!」
◇
「流石に指揮を執るのがいないとやっぱただの雑魚だね。」
「あんたたちなかなかに酷い戦い方するのね。」
いやいや、安定を取るのは重要だろう。不意打ちでこちらに損害を出さないのなら積極的に不意打ちするべきだし、戦わずに済むのなら戦わない方が良い。
「正面から突っ込んでも問題なく倒せただろうけど、まぁ面倒だよね。頭潰して終われるならそれの方が絶対いいよ。」
ドロップしたアイテムを拾っていたエルが合流した。
「敵と同じステージに立つ必要はないってな。さて、これであの扉が開くのかな。」
「この奥に宝箱と石像があるのよ。」
「クリア報酬と帰還ポイントだね。ありがたく頂戴しようか。」
扉を開けながらエルがそう言う。
「報酬はなにかな~なにかな~。新しい術がいいな~。」
「術は出やすいのか?」
「そうでもないよ。むしろ低い方?」
「他はどんなのが出るんだ?」
「なんか変な装備とかかな。腕だけとか腰だけとか。そんなに強くないし・・・。」
シリーズ装備かよ・・・。周回しろってか?
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