スキル
「こちらから要求する最低限の条件はたった一つだ。あの男の掌の上からの脱却。ただし、それは前提条件でありそんな義務だけで最後まで突き進めるほど俺たちは・・・少なくとも俺は出来ていない。」
義務感でやるゲームなどただの苦痛でしかない。
「ついでに言うなら世界を壊すことの対価がそれであり、そこに至るまでの障害を乗り越える事への報酬はまた別だ。どうせあるんだろう?何かは知らんがその道程で俺たちを妨げるものが。それを
本音を言えば別に何もなくても良い。ただ、目の前のとその上の存在がどこまで俺たちに価値を見出し、どこまでを許容するのか確認しておかなければならない。もし代えの利く捨て駒扱いなのだとしたら、こちらとしてもそれ相応の働きしかしないだろう。
それと、あくまで依頼者・被依頼者としての対等な立場を構築しておきたいというのもある。
「・・・わかりました。こちらで可能な支援は全てさせていただきます。しかし、世界を構築する要素に手を入れるのは難しいでしょう。まず、皆様のステータス値や装備を直接改変することはできません。次に、今後戦うであろう何某かを弱体化するという事も不可能です。最後に、私たちから誰かを出向させることもできません。可能なのは、層外からの監視をかいくぐらせる、また軽度ながら虚偽の情報を送信するようにすること、そして、スキルのきっかけとなるモノを授けること、そして一番重要なのが、皆様を世界のシステムから一部脱却させることです。」
「スキルはステータスの一部じゃないのか?」
「この世界に根付いている物は心術と心技のみです。スキルは後付けで埋め込まれた
スキルは発現方法が不明だったため後回しにしていたが、イレギュラーな存在だったようだ。思えば、今までスキルに言及した人物や書物に出合ったことが無い。
「・・・ストレ、お前はどんなスキルを持っている?」
「そもそもスキルって何よ?」
そういう事らしい。やっと違和感の正体が分かった。
「一応ステータスを見せてもらっても良いか?」
「まぁそれくらいなら・・・パーティも組んでるのに見せてなかったのがおかしいわ。」
しかし見せてもらったステータス画面は俺たちと何ら変わりのないものだった。
「なぁ、普通に表示されてるが・・・。」
「そんなわけ・・・本当だ、なにこれ・・・。」
「スキルと言う存在を理解したためです。それまでロックされていた情報が開示されたにすぎません。」
「・・・そうか。で、ストレに質問なんだがステータスはどう振ってるんだ?」
「それが今関係あるの?」
直接は関係ない。しかし、一つ確認したいことができてしまった。
「まぁいいけど。実際に戦ってみて、どのステータスが足りてないかなーって考えてから振ってるわよ。大体そうなんじゃないの?」
そうだ、NPCも
「ははっ。」
方向的にフェルズであろう乾いた笑いが聞こえた。やはり地頭の良さが出たか、このやり取りだけで理解できたようだ。
「フェルズ。」
「えぇ、わかっております。
「そうだな。多分そういう事だ。」
「えぇ?どういうことですかぁ?」
あぁ、そういう事かとエルが声を上げる。
「気付けば単純だったよ。戦ってレベルを上げてステータスをどう振ろうか悩んで、自分に足りていないものを補うために技や術を覚える。これってもう僕たちと同じプレイヤーだよね。で、今の僕たちは中に人間がいると言える状態か微妙なところだよね。それなら、きっとストレちゃんと僕たちは同じ存在なんだよ。持ってる情報量から視点が違っただけでさ。」
「あーなるほどぉ。だってさストレちゃん!私たち同じだって!」
「え、えぇ?」
先程とは真逆の結論が出てストレが混乱している。
「まぁ良いじゃないか。おっと、脱線させて悪かった。で、何を貰えるのか教えてもらおうか。」
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