#79 僕のホンネ

・・・・・・・・・

 まさか、華音が京汰に僕のことを話すとは。驚きすぎて、つい映画館まで飛んできてしまった。京汰の邪魔するつもりはなかったんだけどなぁ。……ホントよ? 本当に、邪魔する気なんて微塵もなかったんだって。あれは事故です事故。


 めちゃめちゃ想定外な形で、華音が僕を再び認識できるようになったことが京汰に分かってしまった。

 隠してたわけじゃないんだよ? ただ、物事にはタイミングってのがあるんだってば。

 京汰は2人きりのデートのはずが3人になり、不機嫌なのがよーーーく分かった。もうね、とんでもなくよーーーく分かりました。ただ、その不機嫌なのを華音ちゃんに全く見せてなかったとこは素晴らしいけどね。邪魔して大変申し訳ございませんでした。


 けどさ、ちゃんと宣言したでしょ? これからも、華音ちゃんを好きでい続けると。

 京汰に傾きかけてる想いを、僕の方にも傾けさせてみせると。

 ご主人にも京汰にも認めてもらえたんだから、僕は頑張るよ、僕なりに。



 ……まぁ、本音言えば、華音ちゃんとは究極両想いになれなくてもいいんだけれどね。

 ……そんなこと言ったら京汰が秒で余裕ぶっこくはずだから、口が裂けても言わないと、決めているけれど。


 華音ちゃんに憑依ひょういしていた姫は、ただただ末裔まつえいの幸せを願っていた。

 姫の言葉には重みがあった。僕にも、その意味が痛いほど分かる。


 姫の言葉を聞いて、僕は気づいたんだ。

 京汰が幸せになること。それこそが、僕にとって最上のよろこびなんだと。

 京汰の幸せを奪ってまで、僕は幸せになりたくないよ。


 ただ、たとえ憎たらしくったって、恋敵がいれば燃えるでしょう? 1人より2人なら、青春をさらに楽しめるでしょう? もっと彼女を幸せにして、守りたいって、強く想うでしょう?

 その想いこそが、君を強くするんだよ。成長させるんだ。そうしたら君はもっとイケメンになれるよ。


 僕にとって、君はただの教育相手ではない。お世話が必要なただのべびちゃんでもない。

 ただのひよっこ陰陽師でもないし、ただの同居人でもない。


 そりゃね、自画自賛しがちだし、要領悪いし、家事苦手だし、勉強も苦手だし、すぐ悪態つくし、言葉遣い悪いし、かなり抜けてるし、恋にしても妖にしても、超がつくほどの鈍感だし。かなり欠点はあるけどさ。


 でもね、僕にとって京汰は、誰よりも大切な友達。

 ずっと傍で守りたい人。


 だから、これからも。


 仲良くいよう。

 ケンカもしよう。

 ずっと一緒にいよう。




 君が幸せになって、その幸せを守り続けて、

 いつか自然に還ってゆく、

 その日まで。

 僕は見届けるって決めたんだ。



 これからも、京汰にとっての

 憎たらしい式神でいるからね。



 ◇◇◇


 ……とまぁ、そんなことを僕が思ってるなんて、隣で鼻息荒くしてるおバカは全く気づいてないだろうけどね! けどそこが可愛いから許すよ。


(あぁっ、もうっ、悠馬のバカ! 本当にバカ!)

<ごめんって〜>



 今日も明日もその先も、僕らは一緒に、この道を歩いて帰るんだ。




 夕日が僕たちを暖かく照らす。




 帰る家はもう、目の前だ。




<了>

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