#49 異民族には勝てねぇ

・・・・・・・・・

(とりま屋上に退避させてください……外の空気欲しい……)


 俺の必死の訴えを悠馬は聞いてくれて、俺達は今屋上にいる。


「ぷはぁぁぁぁぁーーっっ」


 心地よく吹く風に、焦りとか不安とか緊張とかの、モヤモヤの全てを乗せて運んでもらった。お陰で幾分楽になった気がする。


<ったくこのビビリめ>

「うるせぇなぁもうっ」


 屋上には悠馬と俺だけだったから、普通に声を出して話していた。


<だって事実じゃんか。落ち着いた?>

「少しは落ち着いたかな」

「おい、独り言がデカい」

「…………は?」


 なんか今、新たな声が入ってきたんですが。かなり低い声音が。

 後ろを振り返ると。


「は? じゃねえだろ」

「み、皆川先輩……!」


 いつの間に来てたんですか……?!

 思わず一瞬、悠馬と顔を見合わせるけど、悠馬はそれほど驚いていない様子。え、まさかの知ってた?

 皆川大和先輩は、綺麗な眉を片方だけ、僅かに上げる。


「なんで俺の名前……」

「えっ、いやだって、有名じゃないっすか……」


 慌てて答えると、あーそうだな、俺有名かぁ、と笑う。今ここシャッターチャンスだと思う。

 俺が惚れ惚れと見つめていたのも束の間、彼は容赦無く切り込んできた。


「お前は、昨日俺のこと睨んできた奴だろ」

「はぁ……そうです、すみません」

「まぁいいよ別に」


 良くなさそうな雰囲気めっちゃ声から滲み出てますけどね。でも「いいよ」と言ってもらったので、もう気にしないことにする。

 俺はハッとして先輩に尋ねた。


「告白タイム始まりますよ……ここにいていいんですか?」

「逃げてきたんだよ。お前は?」

「お、俺も逃げてきました……」


 なんと。このイケメンと理由同じとかいうことあるんだ。


「どーせお前ビビっただけだろ、ライバルの人数多すぎて」


 ぐぬぬ。ご名答です。華音様を狙うライバルがざっと10名以上いてビビりまくっただけです。クソメンタルの俺にはどうしようもなくてですね。俺は仕方なく首肯した。


「…………はい」

「俺もだよ」

「えっ?」


 先輩も意外にビビりなの?! それはびっくり。仲間ですね。

 彼は苦笑いしながら言った。


「俺目当ての人数が多すぎて、ビビって逃げてきたの」


 風に揺れる前髪を弄りながら、サラッと爆弾発言。

 前言撤回。仲間どころか異民族でした。

 やっぱイケメンは自覚あんだな……俺には未知すぎて分からねぇわ。

 これ皆川先輩だからこそ、言っても許されるセリフでしかない……。俺が言ったら即座に炎上しちゃうよ。

 屋上に来た理由同じとか思ってた俺がやっぱりバカでした。はい。

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