文化祭2日目
#45 最後のイベント
・・・・・・・・・
華音様と同じシフトで、傍目から見ても舞い上がっていた城田を適当にいじっていたら、1日目はあっという間に終わった。
結局、華音様とちゃんと話せる時間などなかった。でもまぁ、膝の調子が良くなって、試合で活躍する姿を見れて良かった。あのテニスバカよりも、俺は結構得をしたと思っている。
帰宅するなり、悠馬は隠形を解いて普通に俺に話しかけてくる。
『もう今日超楽しかった~文化祭、最高ぉぉ! でも疲れたっ』
「そりゃあ、すんげぇはしゃいですんげぇ食ったら式神でも多分疲れるだろ」
『うんっ、だから今日の家事は全て京汰くん担当で!』
「いや待て俺明日カフェのシフトだから無理忙しい」
『はぁ?! たった2時間じゃん! 日々の家事なんか何時間かかると思ってるんだよバカぁぁ』
他の子は大抵1時間のシフトで済むんだけど、まぁほら俺帰宅部だから。な。
それに言われてみれば確かに、ほぼ年中無休の家事を一手に担っているのは悠馬だ。こいつが来てから2ヶ月足らずだが、その間に何時間家事に費やされたか考えるだけでも、ちょっと恐ろしかったりする。
……仕方ない、今日は俺がやるよ、家事。
短く溜め息をついて、重い腰をあげる。
本当は俺の“お世話係’”のはずなんだけどな、あいつ。
軽めの夕飯を食べて皿を洗っていると、ソファに沈んでいた悠馬が(質量ないのに沈んでるの不思議)、急に跳ね起きた。
『あーっそうだ! ねぇねぇねぇねぇっっ!!!』
「何だようっせーな」
『そーいや明日どーすんのよ』
「明日? 普通にカフェのシフト出て帰りますけど」
『いやいや何いってんのよ、京汰は最後のイベントまでいないとダメでしょう??』
最後のイベント……?
学校中に貼られていたけど、あえてスルーしていたチラシを突如思い出して、思わず皿を落としそうになる。
「あっぶね……ちょ、おま、まさか」
『あれは京汰くんのためのイベントでしょうが! それに僕も見てみたいもん、告白タイム!!!』
“今年もやります告白タイム~ホールの中心で愛を叫ぶ(受け取ってもらえるかは相手次第)~”
俺の学校には、演劇とかやれるちょっとしたホールがある。そこで毎年、文化祭2日目に行われる大トリイベント。
それが、告白タイムである。
誰でも参加自由で、飛び入り参加もオッケー。ここでは様々なドラマが生まれたんだ、と卒業生によって長く語り継がれる名イベントなのである。
今年はやはり、華音様に交際を申し込む輩が圧倒的に多そうだと風の噂で聞いていた。
「い、いや俺は参加しないぞ」
『なんでよ~せっかくのチャンスじゃん! 飛び入りOKっていうんだから』
「告白とかやり方分かんないし……そもそも華音様も人数増えたら迷惑かなぁと……」
『そゆときだけなんで遠慮すんだっ、普段は図々しいくせにっ! 華音様取られてもいいのかっ、あの皆川とやらにっ! あの人参加するかは知らんけど!』
「皆川先輩くらいのイケメンには勝てねぇよ……それに皆川先輩以外にもいるやろライバルたくさん……城田とかもいんだろ……」
『テニスバカは相手にされないって! 弱気になってどーするのっ』
悠馬って、感情に任せて結構な量の失言するよな。
たしかに華音様のことは好き。いつも俺の頭の中を占領して、家での様子とかも想像しちゃって、私服も想像しちゃって、週3で夢に出てくるくらいには好き。声を聞く度に、全身にピリッと、でもちょっと甘い刺激が行き渡るくらいには好き。
だから悠馬の言ってることも頭では分かってる。このチャンス逃したら、俺はもうまともに華音様に近づけないくらいにビビリなんだ、ってことは自分が一番よく知ってるんだってば。
でも明日急に告白はハードル高いって、さすがに……!
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