#17 漢の勝負
京汰の試験は全て返ってきた。古典は7割超えてたみたい。
なんと今回の中間テスト、全教科でこの前のボロボロの期末試験よりも30点はアップしたんだって。
やればできるじゃん! と褒めるべきか、前まで出来なさすぎじゃない?! と貶すべきか、僕には分からない。
どっちみち、後は学年平均がきちんと出るのを待つだけだ。
京汰の学校では、学年平均はクラスの掲示板に、成績優秀者の表とともに貼り出される。
ちなみに、成績優秀者は1位から10位までの生徒の名前が総合得点とともに載るが、華音ちゃんはその常連メンバーだ。
いわゆる、才色兼備そのもの。 だから人気に拍車がかかるのだ。 女子の憧れの的でもあるらしい。
京汰の結果はどうだろうか……。
学年平均と成績優秀者の表が貼り出されるのは、この日の13時。
今まで、成績が底辺すぎたために、その発表に無頓着極まりなかったらしい京汰は、今回ばかりは違ったようだ。もはや僕と出会う前の京汰を見てみたい。……それはそれはもう、だらしなかったんだろうなぁ。
隣の京汰は13時ちょうどに間に合うように、早弁までして、試験の解答用紙を力強く握りしめている。
……華音ちゃんはじめみんなが、いつもと違いすぎる京汰の行動に戸惑っているようだ。無理もない。
「やっぱ藤井くん、珍しいよね」
「藤井、なんかあったんかな?」
「両親についに叱られたとか?」
「あいつ、もしかして成績優秀者名簿狙ってる?」
「まさか。可能性があるとしたら、平均点の掲示だろうな」
「あいつが平均点超えたら、北半球と南半球ひっくり返るぞ」
「あいつが平均点超えたとしたら、ここはきっとパラレルワールドだな」
「いや、あいつが平均点超えたら、地球は割れるよ」
「それか、新たな宇宙が誕生しそうだな」
「それはありうる」
……京汰の平均点超えって、どんだけ歴史的な事件なんだ。僕はちょっと、いやかなり引いている。
当人はそんな外野の声は聞こえないらしく、ただただ時計を凝視していた。怖いって。
僕は今すぐ
・・・・・・・・・・・・・・・
ようやく13時がやってきた。
今まで、学年平均なんてものには無頓着極まりなかった俺が、早弁を済ませてこの時を待っている。悠馬の弁当は味わわなくてもうまい。
……この自分の変わりっぷりは、革命的だと思う。世界が変わりそう。
クラスのみんなが、怪訝な顔をしているのは十分分かっていた。
そりゃそうだ。
いつも学年ワーストランキングの常連なのだ。華音様とは真逆の人間が、どうせ自分の得点より30〜40点は高い学年平均の発表を早弁までして待ち、そんなものの発表前にとっくにゴミ焼却場行きの運命を辿る俺の答案が、今、俺の手に握られているのだから。
ただ、前にも言った通り、これは式神との
時計の長針が12を指すのを見た瞬間、すぐさま掲示板へ駆け寄った。ちょうど、学年主任が紙を掲示し終わった所だった。主任まで僕を見て、ギョッとした顔をする。……失礼すぎんか。
どれどれ……?
<京汰、どう? どうどう? どうだった?>
悠馬はいつも通り、俺の肩にぴったりとくっつくようにして立っている。
(…………)
<京汰?? どーなのよ、何か言ってよ>
俺の手は、震えていた。 震えちゃうよ、とまんないよこの震え。
だって。
こんなこと、こんなこと、こんな、こと…………
「はじめてだぁぁぁぁぁあっっっっっ!!!!!!!」
悠馬は僕と掲示板を交互に見やる。
<え、どゆこと>
え、どういうことって。
……こーゆーことだよ。
「超えたーーーーーっ!!! 学年平均超えたーーーーーっ!!! 人生初! この16年間の人生のターニングポイント! 脱、ワーストランキング常連者! っっっしゃぁぁあ勝ったぜ勝ったよ俺様の輝かしい勝利っ! とらいあんふっ!!!! 見たか式神!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます