#15 ホントに無敵?

 ……終わった。


 中間テストが、終わった。3日間がこれだけ長いと思ったのは、初めてだ。いつも超適当、感性の赴くままに空欄を埋めていた俺とは違うからな。受験の時以来だよ、こんなに頭使ったのは。人生史上最大級にブドウ糖を求めていた気がするもの。


 
俺にとっての決戦、人間様vs.式神戦は、あと結果を待つのみだ。

 
1時間目、古典の時間。ちゃんと活用形覚えたんだぞ。平均点は超えてる……はずだ!


 俺は答案返却を待ち望んだ。


 
教師どもよ。

 
早く答案を返せ。早く返すんだ! 返してくれなきゃ、結果が分かんなきゃ、この仁義なき闘いは終わらないんだ!

 
俺が、この俺が、どれだけの想いを込めてこの試験に挑んだか、どれだけの辛い思いをして式神とパフパフ殴り合ったか!


 恐らく、お前たちは、俺の答案を見て固まるだろう。答案の氏名欄を二度見するだろう。そして、カンニング行為を疑うだろう、と同時に、藤井京汰は見かけは相当の馬鹿だけど、カンニングするほどの馬鹿じゃないと言うことに程なくして気づくだろう。


 そうだ。それこそが、俺の本当の力だ。俺様の執念じみた恋心ほど、無敵なものはない。

 
だって、俺の恋敵は憎たらしい式神だったんだ。負けたくないって思うだろ? 普通。


 俺様は無敵。そう、無敵…………。


<京汰、どした? 何ニヤけてんの? まだ答案も返されてないのに……あ、まさかこれ、自信満々ってことですか? 見てろよ教師! 俺様こそ無敵! みたいな? 式神如きの恋敵には負けねぇ、みたいな?……うわぁ、すごいニヤついてる……怖っ>


 
……なんだこの悪意満々のセリフ!! お前それでも俺様の式神か……?!


・・・・・・・・・・・・・・・


(うるせぇぇぇ!!!! 俺の考えてることドンピシャで当てるなてめぇぇぇ!!! 占い師かお前は! エスパーか?! いや、式神だよなっ、そーだそーだ式神だぁいっ!……ええいっ、そーだよお察しの通り俺は無敵だよ! 式神如きの恋敵になんて負ける気しねぇよこらぁっ)


 
こんなに怒ってても、ここは学校。普通に喋ったら完全に変人扱いされる環境下で、京汰は言葉を出さずに会話することができていた。感情に任せて、つい普通に喋っちゃうんじゃないかと心配したけど。成長したね、京汰……。

 
と、僕がしみじみと感傷に浸っていると、


(お? 今日は珍しい。言い返すこともなく静かじゃねぇか悠馬。誇り高き俺様のご意見についに反論できなくなったか? まぁそうだろうな、俺様は事実を述べたまでで……)
 



 ……感傷に浸った僕が、馬鹿だった。

 そうだそうだ。この人はバカなんでした。大前提が僕の頭から吹っ飛んでました。


<いやぁ、ほんとに、京汰は口から生まれ出た奴なのかなって感心してただけだよ。まぁ陰陽師の息子だもんね。ちょっとくらい非人間的なことが起きても別に不思議じゃないもんね。っていうか、本当に京汰が無敵なら、普段から良い点数取ってるはずなんだけどなぁ……成績優秀者の華音ちゃんと肩を並べて張り合ってるはずなんだけどなぁ……おっかしいなぁ……もはや学力が底辺過ぎて、1周回って無敵って意味じゃないのかなぁ……>


 

あれ? 京汰が言い返してこない。

 
珍しく静かじゃないか京汰。

 
式神様のご意見についに反論できなくなった?


 まぁ、そうだよね。


 京汰の乏しい語彙じゃ反論できないかな……??

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