#6 学校ってたのしい
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僕は、とてもワクワクしていた。
だって……はじめての学校だもん!! 校門を通り、教室へと階段を京汰と一緒に上がって行く。
自然と心が踊る。
隠形しているので、はしゃいでも正体がバレることはまずないだろう。でも思わず人目を気にするほど、僕ははしゃいでいた。
なんていったって、女子どものミニスカートがたまらない! スカートから覗く、彼女達の生あ……
(ここが俺の教室で……おい、悠馬? おい悠馬っ!!)
……もちろん、京汰は大声で僕を呼んだ訳じゃない。 僕が隠形している間は、言葉を出さずに会話できるのだ。テレパシーみたいな感覚ね。 お花畑のような妄想に浸っていた僕は、そのせいで現実に引き戻されてしまった。
<もう、何だよー? せっかく今幸せだったのに……>
(何が幸せなのさ)
<学校に来られて、可愛い子たくさん、それに目の保養にもなって、ミニスカのJKたくさん見れて、生脚……>
京汰は途中で、もういい、もう結構、と手をひらひら振った。
(わかったよ、変態)
<へ、変態!? ほら待て京汰っ! 世話してあげてるのに変態なんてっ、失礼ねっ>
京汰はもう、近くの席の子と話していた。
聞いてなかったのか。
しばらくして、担任がやってきたので、僕は教卓の上に座って話を聞いていた。
ここ、みんなを見渡せてなかなか良い席だね。……おっと、先生の邪魔になっちゃう。机の下でスマホ触ってる子、薄手のセーターの腕の中にイヤホンを通して音楽聴いてる子……。なかなか自由なんだねぇ。
京汰が家で「嫌だ嫌だ嫌なんだってば」と嘆いていた授業も、僕にとってはすごく楽しいものだった。
教師の立つ“教壇"というものに一緒に立ってみたり、“黒板"をちょっと触ってみたり……。
京汰はちょっと眉をひそめるけれど、いいじゃんいいじゃん。社会科見学みたいなもんなんだから。
さすがにチョークで何かを書く、というのはやめておいた。傍目から見れば、チョークが浮くことになる。
——無闇に勝手なことはするな
そう。主の言いつけを守るため。僕偉いなぁ。
6時間目の国語の授業。まぶたを閉じかけては、何度もハッとして目をしばたかせる京汰を起こしてやろうと、京汰の耳に息を吹きかけた。
「わっ」
教師が声をかけた。
「藤井、どうした」
「あ、や、何でもないです……」
周りの何人かが、どうしたの? 的な目線を京汰の方に向けた。
京汰は真顔でふるふると首を横に振り、気にしないで! 的なメッセージを周囲に送った。
その後彼は勢いよくシャーペンをつかみ、ノートの端に何かを書いた。僕へのメッセージだろう。
“あのやり方はひどいし、怪しまれる"
<あちゃあ。ごめんねぇ、でも寝てた京汰くんが悪いよ>
(……てめっ)
「馬鹿野郎っっ!! お前みたいな変態のせいで怪しまれただろ! 授業中に生徒がいきなり声あげたら変人だろっ! ホントにお前消すぞ!」
家に帰ってきた瞬間叫ぶ京汰に、僕も応酬した。もう隠形は解除してある。 式神の分際でも、京汰なんぞに言われてたまるか!
『京汰だってひどいよ! せっかく起こしてあげたのに怒るなんて! 変態かどうかなんてどうでもいいだろこの話ではっ』
「何……!? 起こしてあげた、だって!? 何とまぁ生意気な! こっちはお前との同居を許してやってんだ! くあぁっ、憎たらしい憎たらしい式神だぁっ!」
この後、式神と人間の追いかけっこという奇妙な図が生まれた。
僕は体力とかいう概念がないからエンドレスで走れるけれど、人間はそうはいかない。
15分くらいで帰宅部の京汰の息が絶え絶えになり、僕がドクターストップ、いや式神ストップをかけた所で追いかけっこは終了した。京汰専属の式神たる者、京汰の生命維持は僕の最大の使命だからね。
結局京汰は、式神と戯れていた。
いや、戯れるしかなかった、のだろうか……。
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