日本史語らずにいられない!

江戸嚴求(ごんぐ)

第1話:日本史探訪への誘い

私が日本史に興味を持ったのはいつ頃からだろう。小学一年生の時、父が買い与えてくれた伝記集の中で野口英世やエジソンのエピソードが印象に残った。

その時点では日本史そのものより、日本や世界の偉人について知ることのほうが好きだった。

私と日本史の架け橋となったのは、翌年学校の図書館で読み耽った学研の『日本の歴史』シリーズであったと思う。

僅かな手勢で鎌倉武士の大軍を向こうに回し、鎌倉幕府滅亡のきっかけを作った楠木正成。武田信玄や上杉謙信の数度にわたる決戦など。

漫画で読みやすいということもあってか、たちまち私は魅了されていった。

その後、同じ学研のひみつシリーズや藤子不二雄の『ドラえもん』に浮気もしたが、あの時の蓄積がなければ果たして後年日本史にのめり込んだかどうか。

転換期は小学六年生の時だった。二人の恩師から主観的ではあるが、魅力的な歴史の授業を受けて私は日本史そのものに愛情を持つようになった。

ただし太平洋戦争だけは別だった。

現在と違い、前(さき)の戦争に関しては日本が一方的に悪いといういわゆる自虐史観が蔓延していたので(司馬遼太郎ですらそうだった)、二十代の後半まで遠ざけていた節があった。

父に関して言えば、幼い頃この戦争の時期を過ごしていただけにさぞかし恨みに思っているだろう。と、解釈していた。しかし、

「あの戦争が起こったのは仕方がないことだった」

全否定どころか、むしろ肯定する口ぶりであった。終生、日本共産党シンパであったこの人がである。

これは『はだしのゲン』の作者である漫画家の中沢啓治が、首尾一貫して太平洋戦争や天皇制を批判し日本共産党と切っても切れぬ仲になった経緯を考えると、矛盾にすら思えた。

鹿児島と広島。土地柄の違いもあろう。一方は我が国でも最も保守的であり、もう一方は世界で初めて原子爆弾を落とされた場所だ。

中沢啓治ならずとも、日本がアメリカと戦争を起こさなければこんなひどい目に遭わなかったのにと逆恨みしてもやむを得まい。

その上で、あの戦争は我が国にとってどのような立ち位置なのか。それを総括しなければ、未来の子孫たちに申し訳が立つまい。

歴史は戦争と平和の間を行き来する。長い戦争がいつか終わるように、平和は永続こそすれ永遠に続くとは限らない。

我が国もしかり、だ。今年で戦後75年となるが、この平和がいつまで続くか心許ない。私のような非力な存在がそれを心配してどうする?

そんな声が聞こえてきそうな気もする。その通りだ。されど、非力であっても無力ではない。そう信じて、日本史について語りたい。

私は決して専門家ではない。だけど、この国やこの国の歴史についての思いは誰にも負けない自負がある。

だから、いろいろと日本史について語っていきたいと思う。そのことが、未来への架け橋になると信じて。


※このブログは、毎月第2、第4日曜日に転載予定です。

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