7話 地味な仕事こそやるのが冒険者
翌日、しっかり朝食を取った後、早速冒険者ギルドに向かう。
そのまま受付に行って早速認識票をアニスが受け取るわけだが、特に問題も無く、一番下の位が書き込まれている。
「それではこの認識票に関しての説明をしますね。まず魔力を込める事によって名前、位が表示されます」
「やってみな」
「はい」
アニスが認識票の端を持って意識を手に集中するとぼおっと光が浮き上がって、その認識票に名前と位が表示される。歳を取った私にしたらあの認識票の大きさと、表示される文字の大きさは目に辛い。
「で、次に認識票に血の契約をしますので、1滴血を垂らしてください」
歯で指に切れ込みを……ってどれだけ鋭いのだろうか、そんな事は出来ないので素直にナイフを取り出して指先にぷつっと軽く切れ込みを入れ、滲んでくる血を認識票に垂らす。そうすると血の垂らした所が淡く光ってからすぐにその光も収まっていく。
「これでアニスさんとこの認識票が紐付けされました」
これをする事で持ち主が死んでるのか生きてるのかが分かるようになる。冒険者家業をしていると認識票しか残らず、誰が死んだか分からなくなったりするので、其れの措置だ。
また、これの利点と言うのは別の誰かと認識票を交換し、魔力を流して生きているかどうかを確認するというのも出来る。
本人かどうかも魔力を込めて表示が出たときの色で判別できるので非常に使い所のあるものになる。魔力を流すという点だけが問題ではあるのだが、全くもって魔力が無い人間と言うのはこの世にいないので、赤ん坊でも理論上はこの認識票を使う事が出来る。
「さて、後はどんな依頼をするかだね」
本人確認が完了した認識票を首から下げてから、私が見ていた依頼の張ってある掲示板の所に。稼ぎの良い物は大体危険性が高く、大体新人が功を焦って自滅するという話はよくある。何だったら数匹のラビに囲まれて命を落とすって言う事例も少なからずあるので、まずはだ。
「冒険者って言っても色々やれることはあるんですね」
「簡単に言えば何でも屋だよ……まずはこれだね」
ぴっと掲示板の張られている依頼書を外して手元でもう一度確認。
「どういうものですか?」
「街の掃除」
こういう緊急性はないが、常に張り出されている依頼ってのは歩合の場合が多い。冒険者のくせにと言ってこういった事をやらない傾向にある。だからこそやらせるというのもあるのだが、こういう下積みを疎かにするやつは大体碌でもないことになる。
「もっと切った張ったするような事かと思ってたんですが」
「活動拠点にする街では顔を売っておいた方が良い、覚えておきな」
そのまま受付に引き連れて、依頼を受けさせる。
手順はこの間やった通りなので特に引っかかる事も無く、依頼を受理。控えは無くさない所にしっかり仕舞う事と強めに言って置く。
「それじゃあ、頑張って稼いできな」
「一緒には行ってくれないんですか」
「子供のお守までするのは勘弁だね」
「……とんでもない人について行った気がしますよ!」
そんな事をいいながら冒険者ギルドを後にして依頼を受けに行くアニスを見送る。
「良いんですか、あんな感じで……しかも初依頼が掃除って」
「間違った事じゃないよ、顔を覚えて貰って好印象、なおかつ掃除で体を動かすから体力づくりも出来る、ついでに稼げもするから一石三鳥くらいあるんだよ」
「……私が小さいころから知ってますけど、詳しく知らないんですよね……」
「なーに、ただの老いぼれだよ」
そんな事を言いつつ、掲示板の依頼を確認して、適当な物を受けようか考える。一応ダメだった時の保険ってのもかけておかないとね。
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