05

 海岸線のトラック。昼間。


 彼女が、いた。


「なんでここにいる。学校はどうした?」


「こっちの台詞よ」


「認定は取った。卒業を前倒しして、次は学位まで取る。学校に興味は無いんでな」


「そうなの。頭がいいんだ?」


「お前は教員だろうが」


「やめた。仕事」


「は?」


「もう、忙しくすることも、ないかなって」


 さびしそうな、表情。


「大丈夫、なのか?」


「大丈夫じゃないよ。大丈夫じゃ、ない」


 次の言葉を、待った。


「わたし。25になったら。しぬの。心が」


 さびしそうな表情が。消えない。


 それで、冗談を言っているのではないということが、分かってしまう。


「なあんてね。冗談冗談。心がしぬなんて、そんなのありえないわよ。まだまだ若い24才ですから」


「そうか」


 なんと答えていいか、答える手段を、自分は持っていなかった。自分の置かれた状況と、そのくるしさを、心の底に押し込めて。つい口にしてしまった真実を、冗談だとごまかして。


「どうするんだ。これから」


 肯定にも否定にもならない、問いかけになってしまう。


「あなたの走るのを、見てるわ。あなたの走る姿。見てると、すっきりするから」


「そうか」

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