第3話:覚醒
リュシータは背後から伝わる気配に満足していた。
弱虫と他の勇者達から馬鹿にされていたカーツが、戦後教育の楔から解き放たれ、自ら人を殺す覚悟を定め実行していた。
リュシータに匹敵する速度で戦うカーツに、反応できる魔人はいない。
これでディトン王国は最高の戦力を手に入れることができた。
心の奥底に人殺しを忌避する平和主義を持ち、かつ必要とあれば人殺しができる、自制された最高の助っ人だ。
「やはりこういう事ね、レンドル。
魔王軍と結託して、人類を追い詰め、自分達の欲望を満たしていたのね」
一気に反対の国境線に向かったリュシータは、剛剣の勇者レンドルの悪逆非道な虐殺を未然に防ぐことができた。
魔王軍が侵攻してきた丁度反対側に、魔王軍に呼応するように現れる。
そんな都合のいい偶然があるはずがないのだ。
明らかに魔王軍と手を組んで、攻撃のタイミングを計っている。
「ふん、しらんな、単なる偶然よ。
身勝手に俺達をこの世界に呼び出し、奴隷のように扱き使った人間を、神様が罰してくださっているのではないか?」
レンドルが白々し言い訳をするが、それを信じる者などいない。
リュシータはもちろん、全ての裏を知っている他の勇者達も、知って知らないフリをして、自分達の欲望を満たしている。
中には純粋に恨みを晴らしたいだけで、我欲を満たしたいのではない者いたが。
「ふん、少なくとも我が国は勇者召還をした事がないけれど、それも関係ないのよね、この世界の人間全体に責任があるって言うんでしょ、腐れ外道さん」
「よくわかってるじゃないか、その通りだ、この世界の人間全員が悪い。
今からその身体で詫びてもらうよ、聖女リュシータさんよ」
レンドルは全く悪びれず、絶世の美少女を舐めまわすような見た。
普通の女性なら恐怖を感じたり嫌悪感を示すのだが、リュシータは平然と返す。
「ふっ、そうね、貴男達なら、犯罪者の娘に、お前の父親が犯罪を犯した責任をとらすといって輪姦するのでしょうね、狗畜生さん達。
よほど両親の教育が悪かったのか、両親の血筋が悪かったのね。
そんな獣同然の親の顔が見てみたいわ」
リュシータは勇者達を暴発させるために、自分の主義主張とは全く違う事を、平気で口にして相手を罵った。
一時的に自分の主義主張を曲げ、変節漢と罵られようとも、民を護る事を優先できる真の強さがある女、それがリュシータだった。
その挑発に、自分達のやっている事にほんの少しでも疑問を持っていた者、恥じていた者、両親を愛していた者が乗って突っ込んできた。
勇者達が事前に決めていた対リュシータ用の陣形が崩れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます