第二章 八咫烏の揺籠
第11話 翡翠の耳飾り
「
あれから、2年が経った。
初めは、20km以上離れた学校に通うのに頑張っても走っても3時間はかかってしまい、何度も遅刻しては怒られて、刹那に蹴られ、怒られながらと……
そもそも通うこと自体が大変だったが、今ではすっかり移動する術もこなせるようになった。
さらには、帰り道に遭遇した悪霊とか雑鬼たちを簡単に祓うぐらいにはなっている。
物覚えが悪いと散々言われ、何度も危ない目にあって来たが、本来持っている力のおかげでなんとか今までやってこれた。
そして、今、一体何をしているかというと……
「は? おい、
「ふざけてませんよ……それより先生、なんだか肩が軽くなった気がしませんか?」
「え、まぁ、言われてみれば……」
担任で生活指導の伊藤の肩に、あまりよろしくない悪霊……というか、生き霊が憑いていたのを祓ってやった。
「……確かにここ最近肩が重くて……って、それは今関係ないだろう!! いつになったらそのウザったい前髪を切るんだ!! それに、そのピアスも!! 学校につけてくるなと何度言ったらわかる!!」
伊藤は俺が高校に入ってからことあるごとにこの右目を隠すために伸ばしている前髪と、俺の左耳についてる翡翠のピアスに注意をしてくる。
正直に俺の右目が呪われているなんて言ったって、一般人の伊藤が納得するわけがない。
この翡翠のピアスも、俺の力のコントロールがしやすいようにと、春日様がくれたものだ。
「だから、何度も言ってるでしょう? 前髪が長いのは、生まれつき右目が変わった色をしてるからで、このピアスも、死んだばあちゃんの形見なんですって」
「ああ、何度もその話は聞いた。だがな、今の時代そんな目の色が変わっているぐらいで、いじめられるなんて事はないんだ、ちゃんと自分の個性としてだな……」
(いや、だったらこの前髪も十分個性だろ)
もう俺は面倒になってしまって、ちょっと伊藤を黙らせてやろうと思った。
「先生、ミユキちゃんって、誰ですか?」
「は!?」
さっき伊藤に憑いていた生き霊の名前。
伊藤は一体何をしたのか、生き霊を飛ばされるくらいに恨まれているらしい。
「だめじゃないですか、先生奥さんいるんでしょ? なのに浮気なんて————」
「な、なんで知って……————」
「あー……もう一人いますね。名前は————サヤちゃん。さっきからずーっと先生の方見てますけど?」
「ひっ……!! サヤちゃんまで!?」
伊藤は狼狽えながら、周りを見渡す。
しかし、誰もいない。
当たり前だ、俺はずっと伊藤の周りにいる生き霊の話をしている。
悪霊になりかけていたミユキちゃんはさっき祓ってしまったが……————まだ他にも数名憑いてる。
(こいつ、教師のくせにどんだけ浮気してんだよ。しかも、全員から恨まれてる)
「あーあと、ユイちゃんとナナちゃんってのもいますけど————」
「わあああ!! やめろ!! もうわかったから、黙れ!! ……と、とにかく!前髪切れよっ!!」
そう言って、伊藤は逃げていった。
「……颯真、あんた何してんのよ」
「何って、忠告?」
いつから見てたのか、刹那は呆れながらも俺に近づいて来た。
「…………まぁ、いいわ。伊藤もクソ野郎だったしね。それより……大変なことになったかもしれないの」
「大変なこと?」
「玉藻が……復活するかもしれない—————」
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