僕の彼女は勇者で異世界人〜ところが今は僕が異世界人〜

@kaminori

現実編

第0話 プロローグ

「ねえ…私と交際しない?…ちょっと待って、違うわね、…長部おさべ誠くん…貴方の事、とても気になるの。それが好きって事だとは断言できないけれど…私と交際してくれない?」


………

……


言葉が出ない。彼女の意図いとが理解できない。転校してきてまだ間もない彼女が何で…夜中に公園に呼び出せれてみれば…交際って付き合うって事だよね?え!?なにそれ…


「どうしたの?ボーッとしちゃって。これでも生まれて初めての告白なのだから、出来れば返事を聞かせて欲しいんだけど?」


少し困った様な顔で微笑んでいる…人間は許容範囲以上の出来事に直面すると動けないっていうのは本当だったか。そして僕は意識を手放した………



情けない事に生まれて初めて告白された僕は返事の前に気を失った………



「僕に関わっても仕方ないでしょ!」



そう言えば彼女に言った一声は、とても失礼なものだった。だから余計に彼女が告白してくるという事態が理解を超えていた。呼び出されたのだって、てっきり仕返しの類たぐいだと思っていたから。だから少しくらい痛い思いを覚悟して呼び出されてみれば、まさかこんな事になるなんて予想をするわけがない。





「……くん……ねえ……いぶ……だ……い……ぶ?」


誰かに呼ばれている…


何かを聞いている…


答えなきゃ…


でも何を…


「大丈夫よ、安心しなさい。さあ、起きて。貴方には返事を聞かせて貰わないと」


目が醒さめると彼女が僕を覗き込んでいる…頭には柔らかい感覚がある。

これは…膝枕ひざまくら!?慌てて体を起こして彼女と向き合う、公園のベンチに運ばれたみたいだけど


「あ…あれ?僕は…」


「おはよう、どう?気分は」


声の方を見ると心配そうに眉を潜めた彼女…


「ビックリしたわ、いきなり倒れるんだもの。少しムードが無いけれど返事を聞かせて貰えない?」


「あ、あの、僕は貴女に嫌われて当たり前なのに、どうしてそうなるのか…すみません。いきなりの事でしたので頭が追いつかず…」


だめだ…目を見て話せない。…今までの事がようやく思い出せた。あの彼女が?僕と?経験した事がないほど顔が熱を持っているのがわかる…


「で…ですが、とても嬉しいです。是非よろしくお願いします」


彼女はハッと目を開き、口に手を当てだんだんとその瞳に涙が溢あふれれてきているのが見て取れた。


「あ…ありがとう…私も初めてで上手く伝えられなかったけど、こんなに嬉しいものなのね…自分の意思が受け入れられるのは…これからよろしくね、長部誠くん。これからはなんと呼べはいいのかしら?」


「好きなように呼んで下さい。そ…その僕の方こそ何と呼べばいいですか?」


「なら名前で呼んで。私もそうするから」


「あ…葵さん…?」

「誠さん、よろしくお願いします」


「それじゃ行きましょうか…」

「???」




こうして彼女いない歴17年に幕が閉じられた。


僕の彼女は優しく、優雅で、格好良く、




そして……




僕は何故かだたっぴろい草原に立ち尽くしている。


何だこれ?大きく息を吸いゆっくりと吐く。もう一度、さらに続ける。


……息はできる。


遠くから歓喜かんきとも取れる奇声が聞こえるが、取り敢えず放っておいて構わないだろう。


頭がおかしくなったのか?自問自答をしてみる。


…僕の名前は?  …長部誠

…年齢は?    …17歳

…家族構成は? …父と母、妹が一人


大丈夫、覚えている。


…今日の朝食は? …シリアルとヨーグルト

…学校の名前は? …私立東栄…2年A組

…親友は?    …いない。

…彼女は?    ………



遠くで奇声をあげながら巨大な猪を切り刻んでいる………人………でいいのかな?

いや、彼女じゃない…からかわれていただけなのだから。



「あー!!戻って来た!私は帰って来たのよ!この世界に!」



何が何だかわからない。


何が起きた?僕は何故此処ここにいる?頭がフラフラする。これはあれだ気を失う直前だ。

そういえば、同じ事があった様な…


そういえばどうしてこうなったんだっけ?


大丈夫だ…覚えている…あの新学期から全てが始まったんだった…

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