第2話:王家からの降嫁

「父上、母上、余計な駆け引きは時間の無駄です。

 こちらからの条件を提示して、それを受けられるかどうか確認すればいい。

 我が家にも事情と誇りがあるように、キャンディ嬢にも事情と誇りがある」


 私と結婚するのであろう相手、チャネラルが母の言葉に割って入ってきました。


「チャネラル、貴男がそれを言いますか!

 全部貴男のせいなのですよ、貴男さえまともでいてくれれば……」


 女傑マルガネラ夫人がとても悔しそうです。

 全ての元凶はチャネラル卿のようですね。


「はっきり言っておくが、この結婚は白の結婚になる。

 私は君に指一本触れる気はない、必要なら神前で誓いを立てよう」


 なるほど、どうやらチャネラル卿には好きな人がいるようですね。


「だから、君は子供を生むことができない。

 どうしても生みたいというのなら、隠れてソラリス侯爵家とは無関係の子供を、領地で産んでくれ」


 何とも大胆な事を口にしますが、それでは愛する女性との子供はどうするのでしょう、子供を作らない心算なのでしょうか、それとも……


「君が今思ったように、私には子種がないのだよ、だから子供が望めない。

 だから、愛する者とに間に生まれた子を、君との間に子と偽る必要もない。

 その点でも、君の譲歩する必要はないのだよ」


「では、跡継ぎは親戚から迎えられるのですか?」


「王家から弟のビルラドに、第四王女のレオナナ殿下が降嫁されることが決まっているのだよ。

 二人の間に生まれた子にソラリス侯爵家を継がせる事に、王家との間で話が決まっているから、その点も君に譲歩する必要がない」


 なるほど、あの第四王女殿下ですか、普通なら愛人の子は絶対に認知しないのに、国王陛下が周囲の猛反対を押し切って認知されたレオナナ殿下。

 愛人の力が強くて認知した稀な例でも、財産が譲られるだけで王族とは認められないのが普通なのに、王女に迎えられた稀有な存在。


 それほど国王陛下が溺愛されているレオナナ殿下を、後継者のチャネラル卿ではなく次男のビルラド卿に降嫁させるという事は、チャネラル卿に子種がないというのは本当の事なのでしょうね。

 でも、それならば、普通はビルラド卿が跡継ぎに選ばれるはずです。


「今までの話を総合すると、ビルラド卿にも色々と問題がありそうですね。

 いえ、レオナナ殿下にも問題があるように思われます。

 これほどの状態になっても、チャネラル卿がソラリス侯爵家を引き継がなければいけないという事は、ビルラド卿は貴族家の当主には相応しくない。

 そういうことなのでしょ?

 そしてチャネラル卿がソラリス侯爵家の当主となり、ビルラド卿とレオナナ殿下を抑えなければ、ソラリス侯爵家が没落しかねない、そういう事ですね!」


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