【5分で読書】不審者は暗闇神社から
紅葉 楓
第1話 不気味な噂と暗闇神社
「ふひっ…可愛いなぁ…」
暗闇の中で何者かが外を見つめていた。
「次は、彼女にしよう」
そういってその人物はひそかに消えていった。
■■■
「ねえねえ。最近さ、学校の周りで不審者が出ているんだって」
「そういえばお母さんが学校から連絡が来たって言ってた」
「えー、やだ怖いー」
「しかも目撃情報は暗闇神社のほうだってよ、アキ。アキの通学路の近くだよ、気を付けてよね」
「…」
「ちょっとアキ、聞いてる?ぼーっとしていると本当に変なことに巻き込まれるよ!」
「えっ!?あっ…ご、ごめん。う、うん。気を付けるね…」
「全く…本当に大丈夫なんだか。私たち心配だよ」
「アキって可愛いし、結構男どもに狙われてるよー。まあ、アキはそーゆーのに鈍感だけど。夏美が言ったみたいにー妙な男に目を付けられるかもよー」
「アキちゃんだけ私たちと帰る方向逆だから気を付けてね」
「うん。みんなありがとう。気を付けるね」
放課後、アキは仲のいい友達3人と話しながら帰りの準備をしていた。アキの家はほとんどの生徒が帰る街の方とは反対側にあって、山の麓にある。そしてアキの通学路の途中には地元の人たちに暗闇神社と言われる神社があった。名前の由来は参道から神社までの全体に木々が生い茂り、昼間でもそこには日差しが入らず、神社への入り口から先がずっと暗く不気味で、誰も参拝客を見かけないことからそう呼ばれているのだ。
アキたちはそのまま昇降口まで向かい、校門の前で別れを告げた。
「それじゃーねアキ。不審者見つけたらすぐに逃げるんだよ!」
「ばいばいアキちゃん。また明日ね。」
「バイバーイ」
アキは夏美たちに手を振って自分の帰る道の方向に足を動かした。
人通りのない一本道をアキは一人歩いていた。
しばらくして、アキは何か違和感を感じた。
『何だろう…後ろから視線を感じる…』
ひょっとして例の不審者かと思い、アキは不安になりつつも何も気づかなかったようにふるまい、少し歩くスピードを速めた。
しかし、その視線が消えることはなかった。
『どうしよう…やっぱり気のせいじゃないよ!後ろに誰かいるっ』
顔などはよくわからないが明らかに自分の後ろで物陰に隠れながらこそこそと後をつけてくる人物がいた。
アキはスマホを取り出していつでも助けを求められるように準備をした。そして少し小走りで道を行き、視線の先に曲がり角があったのでそこに逃げ込んだ。そして不審者が通り過ぎるのを待とうとしたのだ。
「はあっ…はあっ…んっ…」
アキは荒くなった呼吸を整え、息をひそめた。そして先程自分が通ってきた方向に目を向けた。しかし、その間、人はだれ一人として通らなかった。
『あれ?おかしいな。確かに私の後ろに人がいたはずなんだけど…』
そう不思議に思っているとビュウウウッッと音をたてて勢いよく風が吹いてきた。
「きゃあっ!」
アキは驚いて後ろをみると、赤く染まった空の下、赤い鳥居とその鳥居を囲むように生い茂る木がざわざわと揺れ、カラスたちがバタバタと飛んで行っていく様子が目に入った。
『そうか、この道って暗闇神社に向かう道なんだ』
無意識に曲がったため、今になって気づく。
神社の本殿や拝殿は暗闇の中に隠れて見えず、木々に覆われた入り口はまるで洞窟のようであった。
『やっぱりなんだかこの神社、こわいよぅ』
アキはそう思い、再び開けた道に戻ろうとした。すると道に出る瞬間のところで何かと衝突した。
「きゃっ!?」
ぶつかった反動でそのまま少し後ろよろけた。
「あ、すみません…って、あなたは…」
アキにはそのぶつかった人物に見覚えがあった。
「えっと、安田くん…だよね?同じクラスの」
その人物には見覚えがあった。同じクラスの安田君という男の子だった。彼は見た目はあまりぱっとせず、はっきり言って根暗で、いつも一人でいるような印象であった。
「っ!?」
安田君はアキが声を掛けたのに目もくれず、一目散に逃げていった。
「えっ!?ちょっと!安田君!?」
アキが驚いているうちに彼は神社の暗闇の中へと消えていった。
「なんだったの…ってあれ?安田君ってお家この辺りなのかな?今まで一度も見かけたことないんだけれど…」
アキは一瞬の出来事と内容の多さに混乱していた。そして先程まで感じていた視線ももうないことに気が付く。
「はぁ…なんか疲れたなぁ。早く帰ろ…」
アキはそのまま家路へと向かった。
その後、彼女は何事もなく家へとつくことができた。
一方そのころ、暗闇神社では…
「ふっ、ふひっ…あ、危なかった…」
彼女から逃げた後、安田は自分の事を追及されなくてすんだとほっとしていた。
「まさかアキちゃんにバレそうになるとは…」
安田はそう言ってズボンのポケットからスマホを取り出した。
「ふひっ、アキちゃんやっぱり天使だなぁ~。僕のコレクションの中でもピカ一だよ!」
彼のスマホの画面には無数の制服姿の女子の画像が入っていた。
「まったく、わざわざ家とは真逆の方向まで来てやってるんだ。もっと僕をはかどらせてよね」
彼はそう言って、不気味にほほ笑んだ。
その時、その様子を暗闇の中から何かが見つめていたが、それを知るものは誰も居ない。
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