無色透明と、歩く。
池田春哉
第1話 今、助けて
「『止まない雨はない』なんて、少し偽善的すぎると思わない?」
雨の十七時、コンビニの軒先で。
黒いショートボブを少し濡らした彼女、
「だってそれ『いつか晴れると思うから、それまで苦しみに耐え忍べ』ってことでしょ? そんなのやだよ。その人は今助けてほしいのに。わたしは雨の中にいる人に傘を差してあげられる人になりたいな」
雨宿りをする彼女の前で、ビニール傘を差す僕は言う。
「それは傘を忘れたけどコンビニでまた新しい傘を買うのは悔しいと思ってる今の君に、僕の傘を貸せということ?」
「だってこの前もここで傘買ったんだよ。このままじゃ傘専用のお得意様になっちゃう。そうなったら
彼女は恨めし気にコンビニの店内を睨む。
「これを貸すと僕が濡れちゃうよ?」
僕が訊くと。
「でも一緒に濡れたら、ちょっとは楽になるでしょ?」
彼女は笑った。
「……なるほどね」
そう釣られて笑いながら。
僕だったらどうするんだろうな、と。
他人事のようにそう思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます