隣人~同じ敷地内の君に~

ハル

第1話 出逢い

「明日からいよいよ高校生だ! 念願の一人暮し。自由気ままに過ごすんだから!」



私、津谷 蓮霞(しんたに れんか)15歳。


女子校に通う女の子。

良い3年間にしたいと思っている今日この頃なんだけど ―――




入学式の次の日 ―――



「……あれ?……ここ……共学じゃないはずなのに……何で? どうして男の子いるの?」



「蓮霞」

「あっ! 果緒瑠(かおる)」



私の親友・釈谷 果緒瑠(せきや 果緒瑠)。



「どうしたの? 正門前に突っ立って」

「ここ共学じゃないよね? どうして男の子いるの?」


「あー、ここ共学じゃないんだけど、正門と同じ敷地内に男子校と女子校があるんだよ」


「え゛っ!?」


「まあ……蓮霞にしてみれば良い気しないよね?」


「……うん……果緒瑠知ってたの?」

「うん、一応知ってた」

「ええっ!?」


「いや、蓮霞に話したら行かないって言いそうだから黙ってたの! ごめんっ! だけど、蓮霞の為を思って私と同じ所に行かせたくて……別の高校だったら私、気が気でなくて」


「果緒瑠……」

「本当ごめんっ!」




その時だ。



「おいっ! 邪魔だ! どけよ!」



ムカッ

初対面の相手から突然の態度に腹が立つ。



「避けて行けば良いじゃんっ!」



と、言いながらも振り返る視線の先には男子校と思われる男子生徒。



「ちょっと、蓮霞……」

「それとも何ですか?あなたは真っ直ぐにしか進めない生物なんでしょうか?」



クイッと眼鏡をあげる私。



「なっ! この女……ムカつく!」

「蓮霞……辞めなって……す、すみません……」




そこへ ―――



「玲(れい)どうしたの? 何、 何?もしかして 朝から女子高生にナンパされた? あっ! それともナンパした?」

「テメーじゃあるまいし!」

「いやいや、俺もまずしないし!」



「あなた! この方のお友達の方ですか?」


と、私は今来た男子生徒に尋ねた。


「は、はい……」

「この人、真っ直ぐにしか歩けない人間なんでしょうか?」

「えっ? いやいや……まずないと思う」


「………………」


「果緒瑠、行こう!」

「う、うん」

「おいっ!女っ!待てよっ!」

「何ですか? まだ何か……イチャもんつける気ですか?」


「………………」



グイッ ビクッ


腕を掴まれ、私の肩は強張る中、引き寄せられる。



「お前……性格悪くね?」


「………………」



パッと離す男の子。


そして、ドンと私にわざとらしくぶつかり私達の前から去った。




私達の出逢いは


波瀾万丈の始まりに過ぎなかった






それから1ヶ月が過ぎ。


「もうカップルいるわけ?」



男子校と女子校の同じ敷地内である為、やっぱりカップルは出来やすいもの?


腕を組んだり手を繋いだりしている姿が見受けられる。




「……気が知れない……」


「テメーの」



ビクッ

突然の声に驚く私。



バッと振り返る視線の先には……



「その容姿じゃ一生恋愛所じゃねーよな?」



≪やっぱり奴だ≫



「うるさいなっ! あんたには関係……」


「すみません」



私達の間にお構いなしに割って入ってくる女子生徒が私の目の前で男の子に手紙を渡す。



≪もしやラブレタぁぁーっ!?≫



「えっ!?」と、男の子。


「失礼しますっ!」



そう言うと足早に私達の前を走り去った。



「………………」


「あっ! おいっ! ちょっとっ!」

「……ラブレター…へぇ~…あんたにねぇ~…所詮、顔よ顔」



私は帰り始める。



「あっ! おいっ!」

「何か? つーか…付いてこないでっ!」

「帰ってんだし仕方ねーだろ!帰り道の門はここしかねぇんだよ!」

「ふんっ!」

「うわぁ~、可愛くねぇ~」

「うるさいっ!」



私達は騒ぐ中、帰るのだった。


2回目の再会。


まだまだ可愛い波瀾万丈の前触れに過ぎなかった。

















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