第9話 社長はアクションモノがお好き。
『――許さない…』
―――ッ、ああ…また…
『…私は…私を裏切った貴方を絶対に許さない…っ!』
―――テア…許してくれ…それでも私は――
『呪ってやる…呪ってやる…!』
―――止めてくれ…お願いだからもう…っ、
『あはははははっ!
私を裏切るような人にはピッタリな“呪い”だと思わない?
血を吸わなきゃ生きていけないのに…
その血を直(じか)に吸ったら貴方は――』
―――呪いは甘んじて受ける…受けるからこれ以上はもう…っ、
『ッ、何故…どうしてなのっ?!私が呪いたかったのは貴方だけなのに…
何で私達の息子がこんな姿に…っ!』
―――ああ…もう止めてくれ…っ!罰なら…罰なら私が全部受けるから…
だから息子だけは…!
『…貴方のせいよアラステア…貴方が…貴方があんな男と浮気なんかするから…
ルーカスは…私達の息子は…っ!』
――――――――――――――ッ、
「…社長。」
「ッ、ぁ…?」
車の後部座席でうたた寝をしていた金雀枝(えにしだ)の身体がビクリと跳ね上がり
金雀枝が慌てて寝ぼけ眼(まなこ)のままその場から飛び起きる
「…目的地に到着いたしました。」
「あ…あぁ…すまない…少し眠ってしまっていたようだな…」
「…いえ。」
見れば金雀枝を乗せた車はBARの駐車場に停まっており
その隣の駐車スペースにはG.P.P.所有の黒塗りの車が既に停まっていて
その運転席から丁度加賀が降りたつ姿が見え――
―――マジで一緒に着いてくる気満々かよ…空気読め。
金雀枝がハァ~…とあからさまな深い溜息をつきながら車から降りる
「…また何時もの様に此処で待機しててくれ。…一時間程で戻る。」
「…分かりました。」
「それからコレ――」
金雀枝が上着の内ポケットから財布を取り出そうとするが
「…社長。前から申し上げております通り、受け取れません。」
「しかし…」
「…これも仕事なので、お気になさらず。」
「…分かった。その代わり何かあったら言ってくれ。力になるから…」
「お気遣い、恐れ入ります。」
金雀枝はそれだけ運転手に言い残すと、車のドアを閉めて後ろを振り向く
すると自分の背後に加賀が無言で立っており――
「ッ!おまっ、気配殺して私の後ろに立つな!ゴ〇ゴかよっ!」
「…ゴ〇ゴ?」
「え”っ…知らないの?あの有名な殺し屋を…!」
「…それは――実在の人物ですか?」
「――は?」
加賀のその言葉に金雀枝の思考回路が停止し、一瞬言葉を失うが
直ぐに正気を取り戻すと、まくしたてるように言葉を続ける
「んなワケあるかっ!ジ〇ン・ウィックかジェ〇ソン・ボーンが
現実にいるかって聞いてる様なもんだぞ?!」
「…すみません…誰ですか?ソレ…」
「おい、マジか…」
金雀枝は信じられないといった感じに両手で顔を覆い、天を仰ぎながら
「嘘だろ…?彼等を知らないだなんて…!」と呟き嘆(なげ)く…
暫く金雀枝が顔を両手で覆ったまま
うーうー言いながら辺りをウロウロしていると
突然バッと加賀の元まで走りより、その両肩をガシッと掴むと
加賀の目を真っ直ぐに見つめながら金雀枝が真顔でその口を開いた…
「…今度…ゴ〇ゴ13を50巻程貸してやる。読め。
後ジ〇ン・ウィックとジ〇ソン・ボーンのブルーレイ貸してやる。見ろ。
命令だ。」
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