第3話 彼の眷属。
ホテルに入った三人は
昼食会が行われる予定の一階にあるフレンチレストランへと足早に向かう
すると暫くして三人が進んだ先で目的地であるレストランが見え
三人は既にその入口手前からでも分かる程
賑やかな様相を呈したレストランに足を向けるが…
そのレストラン入口手前で
金雀枝(えにしだ)が一瞬ピクッと眉を顰めながら急にその足を止め――
―――いる…
「…如何なさいましたか?社長。」
「………」
「…?」
:乾(いぬい)と加賀が怪訝な表情で金雀枝の様子を伺う
「…社長?」
「あっ?、あ~…やっぱ今日の昼食会はキャンセルって事で…」
「急に何言いだすんですか社長…そんなのダメに決まってるでしょう?
そもそもこれから先の展開を考え
広尾ホールディングとの繋がりは重要だと言って
今回の昼食会の予定を入れたのは貴方自身でしょうが…
ここまで来てキャンセルとか失礼にも程があります。
ホラ、さっさと行きますよ!」
そう言うと乾は渋る金雀枝の腰の辺りを軽く手で押し
金雀枝は顔を顰めながらも渋々といった感じに乾に促されるまま
そのレストランに足を踏み入れるが――
「ッ、」
レストランに金雀枝が足を踏み入れた途端
昼食会の招待客の何人かが弾んでいた会話を止め
金雀枝に舐めるような視線をぶつけてくる…
―――何時まで経っても慣れないな…
その人を“珍品”見るような目で送ってくる視線には…
その不躾な視線を送りつけてくる何人かは
純粋に金雀枝のその美貌と端麗な容姿に見惚れ、溜息を漏らす中…
その内の何人かの視線は明らかに鋭く、まるで獲物を見るような目で
金雀枝の事を見つめており――
―――ほらね…やっぱ紛(まぎ)れ込んでたか…
“彼の眷属(けんぞく)”が…
金雀枝がその鋭い視線を感じる方を軽く見回す
すると視線の送り主たちはそそくさと視線を逸らし
何事も無かったかのように会話を再開し出す…
―――まあいい…流石にこんな真昼間のこんな場所で――
私を襲ってくるような馬鹿な真似はしないだろ…
もっとも――
此処に居る連中からは“彼の血の匂い”がほとんどしないから――
襲ってきたところで私に触れる事すらできんだろうけど…
金雀枝が周りを一瞥しながら
ビュッフェ形式に整えられたレストラン内を歩きだす…
そこにこの昼食会の主催者である広尾が近づき
「金雀枝さん。」
「広尾さん!お久しぶりです。」
「こちらこそお久しぶりです。いやぁ~…それにしても
相変わらず人目を惹いてらっしゃいますねぇ~…金雀枝さんは…
華があって羨ましい!」
そう言うと広尾は金雀枝が差し出した手を両手で握り締め
金雀枝に負けず劣らずのその端正で人目を惹く顔立ちに
人懐っこい笑みを浮かべながら金雀枝と挨拶を交わす…
「そんな事は…」
金雀枝は広尾に手を握られながら、チラリと周囲に視線を移す…
すると金雀枝達は先ほどよりもより一層周囲の視線を集めており――
―――う”っ…
金雀枝180、広尾185、乾179に加賀188と…
揃いも揃って乾以外180越えの長身の男達が…
しかもそれぞれ誰が見ても美男と分かる程整った顔立ちの男達が
レストランのほぼ中央で4人も固まって立っていれば
それはそれは周囲の人目を惹く事は必然で…
「ン”ン”ッ…あの…少し移動しません?此処じゃ目立つので…」
「主催の私としては目立った方が他の方々と挨拶しやすくて有難いのですが――
他ならぬ金雀枝さんがそう仰(おっしゃ)るのでしたら移動しましょう。
コチラへ…」
そう言うと広尾は三人を連れ、レストランの隅の方へと移動をし始めた…
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