魔法陣を極めしもの~魔法弱者の術もしっかり極めれば最強の道具になるんです~

roundra

第1話

 あれです。転生ってやつみたいです。


 いや、正確なことはよくわからない。だけど、あの、よくある転生ってやつなのだけはよくわかる。

 だって、俺、今普通に意識あるのに赤ん坊みたいなんだもの。


 目の前にいるの、父親と母親みたいだけど、明らかに日本人ではないんだもの。

 聞こえてくる言葉、明らかに日本語じゃないんだけど、なんとなく意味わかるんだもの。


 とりあえず、地球の日本の知識がある状態で転生したってことは間違いなさそうだなぁってなってるのが今。


 死んだときの記憶……?定かでは無い。

 無いから死んで転生したのかどうかもよく分からない。

 もしかしたら、ここまできて壮大な夢オチって可能性もなくはない気がしてきた。


 とりあえず俺は元々アラサーのサラリーマンだったけど、今では赤ん坊なのは間違いないわけで。


 とりあえず、この世界がどんなところなのかはわからんけど、魔法とかある世界なのかな。ここ。

 魔法とか使えるのかな。俺。

 そんなことを思いながら、目を閉じて火よ出ろ!とか思っても使えないから。やっぱりそういう感じの世界じゃないのかなぁ。残念だなぁとか思ってたら、そこに、ばあちゃんがやってきた。


「ウォーター」


 そう、ばあちゃんが言うと、俺がさっきまでくわえてた哺乳瓶の中に水が入っていくのが見えてさ。どうやら、ばあちゃんの指から水が出てるみたいなんだよね。

 やっぱあんじゃん、魔法!なんて思ってると、ばあちゃんが俺のこと抱きかかえてくれてさ。


「うん?どうしたんだい?魔法が好きなのかい?」


 とか言ってくれるから、俺も声上げて笑っちゃったよね。


 それから、ほぼ毎日、ばあちゃんが魔法についての話を聞かせてくれてさ。

 なんとなくこの世界の魔法と状況みたいなものがわかってきたんだよね。

 なんで、俺が最初に魔法使えなかったのかも。


 とりあえず、魔法を使うようにするには詠唱するのが基本みたい。無詠唱魔法もあるみたいなんだけど、結構高度で訓練しないとできないんだって。

 ああ、ただ、道具使うと何も言わなくても使えるものはあるみたいで、どうやら、ばあちゃんはその魔道具の専門家っぽいんだよね。

 父親も母親も、ばあちゃんの弟子みたいで、いろいろ教わったり研究したりしながら生活しているみたい。


 一般的な学校は5歳から通い始めるらしくて、集団生活に慣れたり、国のこととかこの世界のこととか勉強したり。まぁ、普通の学校ってことみたい。

 でも、当然魔法の授業もあるみたいで。もう、学校通う年齢になるのが楽しみになっちゃったよね。


 やっぱさ、異世界に転生したんだから、いろんな魔法使って楽しみたいじゃん。


 うちは、ばあちゃんが魔道具の研究者ってこともあって、魔法関連の本は豊富にあるみたい。

 転生系の話だと、識字率とか低そうに思えるけど、どんな感じなのかはよくわからない。けど、うちの両親もばあちゃんも普通に本の読み聞かせしてくれてるし、まあ、識字率はそこそこあるのかもしれない。


 紙はこれが羊皮紙とかパピルスとかなのかな。普段使ってるような紙でないことは確か。


 ただ、紙に印字されている文字は人の書いたものって感じじゃなくて、明らかに活字って感じがする。

 この世界?この国?で使われている文字は、表音文字で、アルファベットよりも少し少ないくらいの種類みたいだから、活字にしやすかったんだろうな。

 日本語とか、漢字の種類もひらがなもカタカナもってなると相当活字にはしづらかった気するよね。

 日本語のタイプライターとか、アルファベットのものに比べて大変だったみたいだし。


 とりあえず、本に関してはそんなところだから、俺は自分で歩けるようになったら、自宅の書斎によく引きこもってた。

 父さんも母さんも、勉強熱心な姿には喜んでくれていたけど、もう少し外で遊んでくれてもいいって言ってたこともあったな。

 けど、魔法があるんだったら、体力とかそんなにいらない気もするんだけど、そういうもんじゃないのかな。


 言葉がしゃべれるようになったら、当然使ってみたよね。魔法。

 その辺は、ばあちゃんが教えてくれた。

 動けるようになってからわかったんだけど、うちにある本の中にもばあちゃんの著作はいくつかあって。それこそ、賢者様とか呼ばれるほどには有名人らしい。

 賢者の孫とか、転生者の設定としては、大当たりなんじゃね?とか思ったんだけど、意外と賢者様は多いみたいで、なんか、うちの国にも100人ぐらいはいるらしい。


 とりあえず、魔法を使うにはまず集中が大切で。集中するとあたりに魔力の波動みたいなものが漂っているのがわかるから、その中で自分の使いたい魔法の波動を見つけて、それを念で掴んで。それに自分の最終的に形にしたい状態をイメージして、そこに言葉を通すことで実際に魔法の形になる感じ。

 その、漂っている魔法の種類が本当にいろいろあって。基本的な炎とか氷とか水とかは多いし見えやすいしイメージしやすいからすぐ形になってくれるんだけど、空間魔法みたいなのはなかなか見えないし、イメージもしづらいしで使えるようになるまでは結構な訓練が必要になるみたい。

 実際、俺も学校に入る5歳の時点では使えるようにならなかった。

 学校でいきなり何もないところから教科書取り出せたりしたら格好いいし、目立てるかなって思って結構練習しただけに少し残念。


 後、自分の中の魔力の量っていうのももちろん大切。

 魔法の波動をつかむのに必要なのが魔力で。

 いきなり100キロのバーベルを持ち上げることはできないみたいな感じで、いきなり大きい魔法の波動をつかもうと思ってもうまくいかない。無理するとつかみきれなくなって気を失っちゃうし。

 当然、小さいものでもたくさん使ってるとかなりカロリー消費する感じにはなる。

 自分の魔力の量はわからないけど、毎日訓練しているから、同世代の子と比べたらそこそこ力がついてきた感じにはなってるかなって思う。


 そうそう、うちの国は、ウィード王国って所みたいで。魔法王国と呼ばれることもあるぐらい魔法の研究が盛んなところなんだってさ。いろいろと設定的に当たりって感じがしてテンション上がってくるよね。


 そんな感じで、五歳まではとりあえず暇なときには魔法の訓練をして、ばあちゃんとか父さん母さんの魔道具作り見学してって感じで普通に楽しく過ごしてた。


 魔道具作りの工房も家に併設されてたから、そこの家に出入りする使用人とか工房の人とかとも仲良くなれたし、その人たちの子供で同世代の子とも仲良くなったしね。


「おーい、ヴォルクス。なんだよ。今日も魔法の訓練かよ」


 今話しかけてきたのは、父さんの同僚の子どものリック。リックの父親は俺のことを坊ちゃんとかいうむず痒い呼び方するんだけど、こいつは気にせず普通に友達として話してくれるからうれしい。


「そりゃあさ。そろそろ学校はいるんだから、少しは使えるようになっておいた方がいいだろ」


「お前のは少し使えるってレベルじゃねえじゃん。俺の数倍使えるし」


「それは、お前が訓練さぼりすぎてるからだろ。一緒にすんなよ」


「だって、集中するとかよくわかんねえし!」


 そんな感じで叫ぶ声を聞くのもいつも通りで楽しい。


 そんな感じで、異世界での日々を楽しく過ごしていた俺だけど、ついに明日が入学の日だ。


 同級生の人数はそんなに多くないみたいで、5人ほどらしいというのは、ばあちゃんたちの話から分かる。

 初等学校は、5歳から10歳まで通って、そこからほとんどの生徒が中等学校に進む。

 中等学校は10歳から15歳。ただ、初等学校は地元のに通うのが一般的だけど、中等学校からは違う。初等学校で成績優秀だったものは王都の中等学校に通えるらしい。

 この国では15歳で成人だから、中等学校を卒業する段階で半分ぐらいが家業継いだり、働きに出たりする。ただ、中等学校の中でも優秀なものは高等学校に進んで学問を修める。

 高等学校にもなると、貴族様とか一部のエリートしか通えないレベルになるらしい。


 俺の目標は当然高等学校に進むことだ。研究できる魔法のレベルも全然違うだろうし、やっぱし、異世界に来たからにはエリートになって国の役にたったり、最強の魔導士ってのになったりしたいからね。


 そのためにも、明日からの初等学校での生活を頑張らなくちゃな。やっぱり、王都の中等学校に進んだ方が高等学校に行くのには有利になるだろうし、そもそも高等学校は王都にしかないわけだから、中等学校の段階で通っておいた方がいいに決まってるしね。


 そういうわけで、気合の入った初等学校での生活が明日から始まる!

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