第5話 下山
花の色はうつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに。
現代語訳は、桜の花の色は、むなしく衰え色あせてしまった、春の長雨が降っている間に。ちょうど私の美貌が衰えたように、恋や世間のもろもろのことに思い悩んでいるうちに。
と書いてあるが、私はこれは恋の恋心を詠んだ歌だと思っていた。私の解釈では恋も花の色のように、時が経つと色あせてしまう。
恋は熱病に似ている。どんなものにもマックスがあり、頂きに立てばあとは降りるしかない。
生活に恋、愛がなかった。いや女性がいなかっただけに、恋する心をエネルギーにしようと積極的に人を好きになったが、どうしても接点がなかった。接点がないまま頂きは尾根をつくっていたが、私はそこから下山してしまった。
彼女と言葉を交わし、親しくなることを夢見ていたが、恋という熱病は解熱してしまった。これから会話する機会があれば会話はするだろう。しかし、下心はおそらくない。そりゃ、知れば好きになるかもしれないが、やはり知らないというのはどうにも難しいものがある。
中々、自分の生活環境に恋愛対象者がいないだけに、恋する気持ちがない。人生で心を豊かにするのは愛なのに、愛のない生活を送るというのは悲劇に他ならない。
恋のない状態がまた続く。
結局、自分の前に立ちはだかるのは夢。
この三十年かけても開けられなかった開かずの扉を開けない限り、光は差し込まない。しかし、素晴らしい作品に出会うと夢に立ち向かう勇気が湧いてくる。夢に魅了されてしまう自分がいる。
恋は、いつかきっと、
そう思うことしか今は出来ない。
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