マスク越しでもキスがしたい!

レオナル℃

第1話 人は恋をすると探偵になる。

恋は人を探偵にする。

自分には気になる女性がいた。それは私立体育館にスタジオエクササイズで人気のレスミルズのボディコンバットを楽しむ女性だ。自分もボディコンバットが好きでこの私立体育館で彼女を見かけたのが今年の一月。だからまだ面識しかない。当然、名前も年齢も何もわからない。彼女が主婦なのか、それとも未婚者なのか、彼氏はいるのかいないのか、何もわからない。わからないからこそ知りたがる。知りたいからこそ彼女を洞察する。洞察するといってもあからさまではなく、探偵のように相手にばれないように彼女のことを知ろうとする。そして今、自分が得られる情報は見た目しかない。彼女は小柄でショートヘア、年齢は三十歳前半にも見えるし後半と言えば後半にも見える。いや実は四十代に突入しているといえばそうかもしれない。スポーツをやる人は実年齢より若く見えることが多いと自分は思っていた。だから年齢はわからない。しかし、所作から少なくとも二十代は過ぎていると踏んではいるが、それも定かではない。そして顔を見たら次に見るところは左手の薬指だ。そこに指輪があるかどうか、指輪があれば既婚者もしくは彼氏がいる。しかし、彼女の左手には指輪はない。右手にもない。しかし、ボディコンバットをするときは指輪を外してやる場合もある。だからこれだけでは既婚者なのかもわからない。面識しかない自分が得られる情報はそこまでだ。それ以上の情報は聞き耳を立てて得るしかない。彼女と気さくに雑談が出来るこの私立体育館の常連さんとの会話から見た目では知り得ない情報を得ることが出来る。その会話によると彼女はこの私立体育館以外にスポーツジムに通いほぼ毎日ボディコンバットをしているとのこと。そして、この私立体育館には月曜日と金曜日と通っているとのことだった。そして、その会話から家族や旦那、子供というワードは出てこなかった。それはコロナウィルスによる自粛期間中のことを話していても家族や旦那というワードは出てこなかった。そう、2020年はコロナウィルスという伝染病が世界中に蔓延した。それによって人が集まるところは閉鎖された。学校も休校になり、スポーツジムも勿論、休館した。日本中の人々が不要不急の外出は控えることとなった。それが三月から八月まで続いた。そして九月になってようやく私立体育館が再開された。しかし、コロナウィルスの感染対策としてスタジオの人数制限や換気の徹底や発声をしないなど予防対策が講じられた。会話をするにしてもマスク着用の状態で会話をした。その会話で彼女のことを聞いた。そして、本日も彼女とインストラクターとの会話から本日、金曜の平日でありながら、この私立体育館の前にスポーツジムで既にボディコンバットをしてきたとのことだった。それはどういうことか推測すると私立体育館でのボディコンバットは夜からだから、昼間にスポーツジムでボディコンバットをしてきたことになる。といいうことは会社員なら金曜休日だったのか、それとも仕事勤めはしていないのか。仕事勤めをしていないのなら、主婦で旦那がいる可能性は大きい。でも、自分の知りたいのは既婚か未婚か、彼氏の有無、それが一番知りたい情報であり、それを知るにはやはり自分から歩み寄るしかない。そう、ボディコンバットの帰りにただ一言、「お疲れさまでした」と何気なく、気さくに話しかけること。それで嫌な顔をされたら、縁がないだけのことだし、挨拶をして嫌な顔をするのなら、自分の気持ちも離れると思う・・・。と悪いことばかり考えてしまうのは、恋するものの性質なのだろうか?よく恋は人を臆病にすると聞くことがある。それは想いがあって振られたくないという恋心が臆病にするのか。でもそれだけが要因ではない。それは自分自身の問題も大いにある。


第二話では、自分のことについて話そう。



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