―24― チーム決め
アゾット剣の紹介が終わると、皆教室に戻っていった。
教室に戻ると、先生は引き続き学院の説明をしていた。
最初のうちは俺も聞く努力をしていたものの、気がつけば『科学の原理』を机に開いていた。
「それじゃ、今日は以上だ」
気がつけば授業が終わっていた。
今日は初日だからか午前中で授業が終わりだったみたいだ。
「アベルさんはどうされるんですか?」
ふと、ミレイアが話しかけてくる。
「なにを?」
なんのことだかわからず俺は首を傾げる。
「えっと、先生がチームを作れって言ってましたよね」
「チーム?」
「えぇ……なにも聞いてなかったんですか?」
まぁ、そうだな。先生の話は微塵も聞いていなかった。
「チームを作って対抗試合でもするのか?」
「はい、そうです。なんだちゃんと聞いているじゃないですか」
推測をしてみたが、どうやら当たったらしい。
教室を見ると、皆なにやら相談をしている。
チーム作りに励んでいるというわけか。
特に黒板の前に生徒たちが集まっている。
黒板に貼られている紙を皆、眺めているようだ。
「あれはなんだ?」
「あれは生徒のリスト表です。先生が参考に使えということで」
「なるほど」
と、頷き俺はリスト表に近づく。
確かにDクラスの生徒の一覧が書かれていた。
しかしそれだけではない。
名前の左には数字が振ってあり、一番上に書かれている生徒の数字が一番大きく、下になるにつれ数字も小さくなっていた。
そして最後の数字はゼロだ。
ちなみに、数字の隣に書かれている名前はアベル・ギルバート。
つまり俺だ。
察するにこの数字は、その人の魔力量だな。
「おい、このゼロのアベルってどいつのことだよ」
「なんで魔力ゼロのやつがうちの学院にいるんだよ」
「このアベルって生徒とだけはチームを組みたくねぇな」
皆、口々に俺の噂をしていた。
「アベルさん、チームはどうされるんですか?」
ミレイアの声だ。
周囲にいた生徒全員が、ギョッとした表情で俺を見る。
「こ、こいつがアベルかよ……」
誰かがそう言った。
ミレイアのせいで、俺がアベルだということがバレてしまったな。
恐らく、魔力量を参考に皆チームを組むだろう。
となると魔力がゼロとバレたら不利を被りそうだな。
「ミレイア、チームは何人組なんだ?」
「四人ですよ」
「ちなみに期限は?」
「明日までです」
マジか。全く時間がないな。
「そうか、俺は余っているとこに入れてもらうことにする」
魔力ゼロと知られたからには俺を積極的にチームに入れようとする生徒はいないだろうし、そのほうが無難だろう。
「せっかくだし、アベルさん私とチーム組みませんか?」
ミレイアの提案はありがたい。
だが、俺の魔力がゼロなのを知ったらミレイアは後悔するだろう。
ちなみにミレイアの位置はどこなのか、一応確認しようか。
俺はリストを眺める。
俺の一つ上。
言い換えると、下から二番目だ。
魔力量は29。
50が平均だから低いほうではあるな。
「いや、俺のことは気にせずチームを組め」
「なんでそんなことを言うんですか?」
「これを見てみろ」
ミレイアにリスト表を見るよう促す。
「あっ」
気がついたようでミレイアはそう口にした。
「えっと、魔力量は私が一番下だと思っていたんですが……」
ミレイアが気まずそうな表情をしていた。
「こういう事情があるからな。もし、ミレイアのところが一人余ったら入れてくれ」
魔力量は魔術師を評価するさい、最も重要視される指針だ。
全員が初対面というこの状況下では魔力量で人を判断するしかない。
恐らく、ある程度は魔力量の多い順にチームを組んでいく流れになるだろう。
そうなれば下から二番目のミレイアと同じチームを組む可能性は高いが……。
「で、ですが……」
「別に気にする必要はないからな」
なにかを言おうとするミレイアの言葉を遮る。
俺が同じチームになると、他の人を誘いづらくなるだろう。
そんなわけでミレイアの誘いを俺は断ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます