農民なのに伝説の勇者のステータスが与えられた件
希島カツキ
第1話 夢のまた夢
「ライト。起きなさい。」
「ぅぅぅぅう、もう少しだけぇ……」
「ライト!今日はあなたの15歳の誕生日よ早く起きて村長さんのところへ行ってきなさい!」
……
「そうだった!今日は僕の誕生日だった!」
僕はライト。ここはセリア村でまぁ貧しい村だ。
人間は15になると神からステータスを与えられる。ステータスによってはこの人類最強のロイヤルナイトになることだってできる!そしてロイヤルナイトになることこそが僕の小さなころからの夢だ!
しかし問題はこの村は農民しかいない村だということ、農民同士の子供はステータスが低く農民になる場合が多い。
「頼むから農民だけは勘弁してくれよ」
そう言って僕は準備をした。
「おはよう、母さん父さん」
「やっと起きたのね。朝食はそこにあるからね」
「おはようライト。今日からはお前も農民として畑仕事を頑張っていくんだぞ!」
「やめてよ父さん!僕はロイヤルナイトになるんだ。農民になんてなるわけなだろ」
またその話かという表情で父さんがこちらを見てくる。
「あのなライト。この村ではな農民しかいないんだよ。それは今も昔も」
「戦えるほどのステータスを与えられた人はこの村には1人も出てきたことがないんだ」
「なら僕がその1人目のになるんだ」
「夢を持つことはいいことだし大事なことだよ。だけど時には諦めることだって必要なんだ」
「ごちそうさま。もう行ってくるね」
そう言って僕は家を出た。
「父さんはいつもそうだ。僕の夢をすぐ否定してくる。僕がロイヤルナイトに向いてないことなんて僕が一番わかってるさ」
そう言って歯を食いしばる。
「ようライト!その様子じゃまた父さんから何か言われたんだろ」
「おじさん!またあの事だよ。僕だってわかってるんだ。ただ少しの希望だけでも持たせてくれていいのに」
「まあ仕方ないさ。この村では農民以外いないもんな。だが絶対に農民になると決まったわけじゃない。それは今からわかることだが…まっがんばれよ!」
「うん!じゃあねおじさん」
見えてきたな村長さんの家が。
神様どうかお願いします。僕の夢はロイヤルナイトになることです。戦うための強さを僕に下さい!
心の中でそう願った。
「やっぱり緊張するなぁ」
大きく深呼吸をした。
「よし!」
コンコンコン
「入ってよいぞ」
中には村長さんが1人だけいる。
村長さんとステータスを与えられるもの以外は入ってはいけないのだ。
「こんにちは村長さん」
「ライトもついに15か。あんなに小さかった赤ん坊がこんなにもたくましくなって」
村長さんの目には涙がたまっている。
「村長さん泣かないでくださいよ。お別れするわけじゃないんですから」
「なんと、お前の口からそんな言葉が出るとはな。夢はもうあきらめたのか」
「まだなりたいとは思っていますよ。でも僕ももう大人ですから覚悟はできてます」
成長したアインの姿を見て村長がまたもや泣き出しそうになっている。
「それより村長さん。準備はできているのですか?」
「そうじゃったな。準備はできているぞ」
村長さんの後ろには古びた祭壇があり、たくさんのお供え物が置いてある。
「心の準備は大丈夫か」
もう大丈夫だ。きっと僕は農民になるんだろ。でもそれを受け止めないと、僕はもう大人なんだから。
「はい。できています」
「ではそこにナイフがあるから、この紙の上に一滴血を流してくれ」
「わかりました」
ナイフを手に取ると自分の指先にナイフを少し刺しこむ。
少し痛かったが、これくらい大したことないだろう。
そのまま流れてくる血を神の上に落とした。
「これでいいのですか?」
「うむ」
そう言うと村長はその紙を祭壇に置いた。
その時だった目が眩むほどの光が祭壇から放たれた。
「ぅう、まぶしい……」
しかしそういうものだと思って村長からの次の指示を待っていると。
「ま、まさか!そんなことありえないはずじゃ!」
「どうしたんですか!」
まさか普通だとあんなに光らないのだろうか?
「古い書物で読んだことがあるのじゃが、伝説の勇者様が神からステータスを与えられた時も目が眩むほどの光を放ったらしいのじゃ」
「しかし、伝説の勇者が誕生するのは5年後のはずじゃが?」
僕はどういうことだか訳がわからなかった。
伝説の勇者と同じ?ということなのだろうか?
つまりそれって…
「え……ぇぇぇぇぇええええええ!」
「村長それが本当だとしたら……だとしたら僕って……」
「とりあえずその紙を燃やせばお前のステータスが表示されるはずじゃ」
そう言って中庭へと出て行き、僕も急いで中庭にでた。
「これを燃やせばいいんですね?!」
「あぁそうじゃ!早速頼む」
中庭にある焼却炉に投げ入れた。
「さぁどうだ?ステータスが表示できるようになったはずじゃ」
「……どうやって確認するのでしょうか?」
「ステータスを表示と言えばでてくる」
「わかりました。ステータスを表示」
すると目の前にステータスが現れた。
「表示できました」
「早速確認してくれ」
ステータスには攻撃力などが数値化されている。
体力が132
魔力が110
攻撃力が57
守備力が64
素早さが34
なんだこれは?神聖力21?
やはり僕は勇者なのか?
父さんのステータスを以前聞いたことがあったが、はるかにそれを上回っている。
かすかな期待を胸に左上に書いてある文字を見た瞬間、その期待は一気に絶望へと変わった。
「どうだったんじゃ?」
「……農民……です……」
「なんだって?」
「農民……です」
村長も僕の落胆ぶりを見てどうやら信じたようだ。
「そ、そうか。まぁ5年後に誕生するべきはずだから単なる怪奇現象だったんじゃろうな」
「変な期待をさせてすまなかったな」
村長は申し訳なさそうに僕に言った。
「いいんです……こんなところで勇者が誕生するなんてありえませんもんね…覚悟はできてましたし……」
「そもそもロイヤルナイトに憧れて、勇者の誕生の仕方に似てるからって期待した僕が悪いんですから…勇者だなんて夢のまた夢ですから……」
「と、とりあえず、今日は帰ってよいぞ。祝杯は後日アインが元気になってからやるとするから」
「はい。そうさせてもらいます」
そう言って僕は村長の家を後にした。
「ライトにはすまんことをしたのう……」
家に着くと父さん母さんは僕の落胆ぶりを見て察してくれたのかそっとしておいてくれた。
「はぁ。やっぱり農民なのか。覚悟はしておいたけど、あんなことが起こった後じゃやっぱりショックが大きいな」
部屋に着くと倒れるようにしてベットに横になった。
それにしてもあの光は何だったんだろう。
村長さん怪奇現象とか言ってたけど、まさか呪われたりしていないよな。
一応確認しておこう。
「ステータスを表示」
目の前にステータスが現れる。
「このステータス最初は勇者かもって思ったけど農民ってこんなステータスなんだな」
ふと視界に気になるものが映った。
スキル 立ち向かう勇気
どうせ農民のスキルだしせいぜい農作業に役に立つスキルなんだろうなと思い確認してみるとそこには農民にはありえない能力が書いてあった。
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