第22話 幼馴染にはお見通し
「ほぉ~」
「ほぉー」
映画館もない田舎から出てきて、都会で初めて映画館を訪れた時みたいな声が出てしまった。
茜もそれは同様で、この映画館独特な雰囲気に高揚感を抱かずにはいられないようだ。
「私映画館来るの久しぶりかも」
「そうだろうな。お前、忙しいもんな」
「まぁそれはありがたいことなんだけどね。じゃあチケット買いにいこっか」
「おう」
茜とは依然として手を繋いだまま、ずんずんと前を行く茜の後をついて行く。
今まで周りを見てこなかったけど、そういえば茜はちょくちょく視線を集めていた。
あえて地味めにしたのにも関わらず、歩けば振り返られる美少女とか……さすがは大人気モデルって感じだ。
チケットを機械の前に着いた俺と茜は、液晶をタップして進んでいく。
「そういえばこの映画館、カップルシートってやつがあるらしいよ」
「へぇー」
「むぅなんか興味なさげだなぁ」
「ばっかお前。興味しかないわ」
「それはそれで……ねぇ歩夢さん?」
「とか言っておきながらちょっと嬉しそうにしてるのは、幼馴染にはバレバレ」
「も、もう! 察しのいい幼馴染は嫌いですよーだ」
ふんっ! とそっぽを向く茜だが、右手はちゃんと俺と繋がっているところを考えると、ほんとどこまで可愛いんだって思える。
今すぐ結婚したいくらいだ。
「じゃあカップルシート買うぞ」
「どうぞ! ふんっ!」
きっと時間が経てば寂しくなって甘えてくるだろうなと思った俺は、そのまま放置して購入画面を進める。
そんな俺をもちろん不満そうに見ている茜。
「……ふんっ!」
ダメ押しのもう一度。
でも意図は、幼馴染の俺にはお見通しである。
「……」
「……」
「………………歩夢ぅ」
ほら来た。
甘えたそうな顔をして、こちらを見てくる。
まだ粘ってみようと思い、俺は声をかけるのを耐えた。
苦痛であったが、心を鬼にして耐えた。
「あ、歩夢ぅ。構ってよぅ」
「うはっ!」
今度は画面を操作している俺の腕に抱き着いてきた。
右腕全体が柔らかい感覚に包まれて、俺は思わず声を上げてしまった。
「なんで構ってくれないのさぁ……」
「いや。画面に集中しててさ」
「画面に負けた……」
「どこに対抗心燃やしてんだよ」
うるうると涙目で、かつ悔しそうにしている茜にそう言う。
今にも泣きだしてしまいそうな雰囲気があったので、右手を頭の上にぽんと乗せた。そのまま頭を撫でる。
「ごめんな? 今度はもっと構ってやるから、な?」
「…………ほんとに?」
「ほんとにほんとだ」
「ずっとくっついてていい?」
「しょうがねーな」
「……んふふ。歩夢、好き」
さりげなく忍ばせてきた爆弾。
俺をそれをノーガードでもろに喰らってしまい、危うく死にかけるところだった。
だが直前のところで耐えた。
でも、これを思い出して悶絶するという後遺症は残りそうだ。
頭を撫でられて、心底気持ちよさそうな顔をしている茜を目に焼き付けて、出てきたチケットを持って券売機から出る。
「ポップコーン買うか?」
「買う!」
ご機嫌が戻ってきた茜お嬢様は、今度は俺の腕にがっしりとしがみついたまま歩いていた。
周囲からの視線が痛いなと感じつつ、最高に幸せだから目を瞑る。
周りの目なんていちいち気にしてられないのだ。
「ポップコーン、シェアしようね」
「おう」
ポップコーンみたいに幸せをシェア、つまりはシェアハピができたらいいなと思いつつ、ポップコーンの購入列に並んだのだった。
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※ここからはただのおふざけなので、見なくても大丈夫です(o^―^o)ニコ
――お二人の様子を見て、何を思いましたか。
「そうですね。とにかく甘ぇなって思いました。ちょうど持ち合わせていた苦いチョコに命を救われましたね。いやぁーあれはほぼテロですよテロ! 嫉妬心も抱けないんですから。あれは頭の悪いただのいちゃつきではなかった。そう、あれは――爽やかないちゃつき。そうとでも言っておきましょう」
――爽やかないちゃつき……とは?
「つまりは、人目をはばからずいちゃつき、非リアを爆増させるものとは全く違う、幸せを分け与えるいちゃつきなんですよ、はい。あんなに見ていて、ただ純粋にキュンキュンするいちゃつきは久しぶりですよ。俺、若返ってません?」
――……あはは。では最後に一言。
「早く結婚しろよ」
以上、二人の様子を目撃した38歳会社員、田中のインタビューでした。
たぶんこのインタビュー。僕の作品を見てくれてる人なら分かる(笑)
ここまで見ていただき、感謝感激です!(o^―^o)ニコ
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