第10話 恋人になりました
ご飯を食べ終わった後、俺の部屋で映画が見たいと言い出した茜に付き合って、俺の部屋で映画を見ていた。
茜はすでにメイドコスプレからパジャマに着替えていて、そのパジャマがまた男心をくすぐってくる。
女子のモコモコしたパジャマはなんでこんなに可愛いんだろう。
メイドコスプレと違った良さがあった。
「そういえばさ、俺たちの関係ってどうなんだろうな」
「唐突にどうしたの?」
「いや、今日友達に聞かれてな。今のところ結婚してるわけでもないし、付き合ってるわけでもないだろ? そこんところ全然決めてなかったなって」
「確かにそうだったねぇ。ほんとなら今すぐにでも結婚したいよ? 私は」
「お前そういうことよくナチュラルに言えるな」
俺だったら死に際くらいしか素直に言えない気がする。
でも茜ばっかりに言わせてはダメだと思うから、俺は男として口を開いた。
「そりゃ俺だって今すぐにでも茜と結婚したいよ。でも法律が許してくれないからなぁ……」
「……歩夢も素直に言ってんじゃん」
「前例があるからぁ」
「悪いことみたいに言うな!」
頭をぽこんと叩かれる。
だけど全く痛くない。むしろ幸せが弾けたと思う。
「でもやっぱり結婚できないよね。じゃあやっぱり……恋人?」
「恋人……かぁ」
正直なところ、今の関係と恋人はどこが違うのかわからない。
まぁ今だったらキスとかはしないし、そういうのに抵抗がなくなるということ……なのか?
「まぁ普通、結婚する前に付き合ってお互いのこと知るよね」
「……まぁ、俺たちは付き合う前からお互いのこと知りすぎてるけどな」
「んふふ、確かに。でも、通るべきことなのかもね」
「確かにそうだな」
そう答えると、茜が俺の腕にしがみついてきた。
こう見ると、男の俺から見たら茜はすごく小さかった。
テレビで見るとあんなに大きく見えた茜が、今こうして俺の横にいて。
妙に庇護欲をそそられた。
こいつも大人気モデルってだけで、ただの女の子だ。
俺で務まるかは定かではないが、守ってあげる存在がやはり必要だろう。
茜に視線を向けると、茜は幸せを噛みしめるように、温かい笑みを浮かべて目を瞑っていた。
「歩夢は……さ、私と恋人になりたい?」
その質問が来ると分かっていて、俺はすでに答えを用意していた。
だからすぐに答える。
「なりたいよ」
「恋人になったら、甘えさせてくれる?」
「多少は……な?」
「……えへへ」
……。
なんだこれ。俺の幼馴染可愛すぎんだろ。
今すぐに外に出て、「俺の幼馴染可愛すぎんだろォォォォォォォ!!!!!」と叫びたい気分だった。
「じゃあ恋人、始めますか?」
「……おう」
「やった」
小さくそう呟いて、少し強めに俺の腕に抱き着く茜。
決して目は開けず、でも依然として表情は柔らかかった。
「茜? 寝たら映画見れなくなっちゃうぞ?」
「この幸せを胸に、私は寝たいのです」
「そっか。じゃあ存分に寝てくれ」
「うむ」
そう答えて、今度は本格的に寝息を立て始めた茜。
昔からこいつは自由な奴だった。自分から映画を見たいと言っておいて、寝ることもざらにあった。
だからこうなるのも、別に今更驚くことではない。
『好きだぁぁぁぁぁ!!』
映画の中で主人公がそう叫んだ。
そういえば、俺たちはあんまり面と向かって「好きだ」とか言わなかったな。
まぁほぼ「好き」って言ってるもんだし、お互いわかってるから今更って感じなのか。
腕にしがみついて寝ている幼馴染の頭を撫でる。
すると気持ちよさそうな顔をした。
「こいつが俺の彼女……か」
なんて俺は幸せ者なんだ、と改めて思う。
「俺も、頑張らないとな」
それと同時に、茜に負けてばっかじゃいられないなと思った。
今度は全国模試で一位を狙いにいかなきゃだめだな。
「でもまぁ、あと少しだけはこうしといてやるか」
映画が終わった後も、茜は俺の腕にしがみついて寝ていた。
もちろん、俺の幼馴染は寝顔も可愛いかった。
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