大人気モデルになった幼馴染が幼い頃に交わした俺との約束を果たすために帰ってきた件

本町かまくら

第1話 校門前に佇む美少女



『大人になったら、結婚しよう!』


『うん! 約束ね!』



 およそ四年前に交わした、幼馴染との約束。

 俺たちなら絶対に果たせると、そう思っていた約束。


 だけど、その約束を交わしてからの約四年間。


 俺は一度も、幼馴染と会っていない――




   ***




「ほんとお前いい加減幼馴染? のこと忘れろって」


「もう忘れてるっての。とっくのとうに」


「じゃあなんで姫岡の告白断ったんだよ。あの子結構可愛いで有名だぜ?」


「……うるせーよ」


 適当にあしらって、俺、八朔歩夢(はっさくあゆむ)はまた机に突っ伏した。

 もうこの話を終わりにしたかったのだが、前の席に勝手に座る奴はまだ続ける。


「もったいねーなぁほんと。俺だったら絶対付き合うのに」


「俺はいいんだよ」


「幼馴染との約束があるからか?」


「……そういうわけじゃ、ねぇよ」


 実際、そういうわけである。

 俺は高校生にもなって未だに数年前に幼馴染と交わした約束が忘れられていないのだ。


 そんな俺に、友人である渋谷正弘(しぶやまさひろ)がため息をつく。


「それと、その幼馴染があの明理川茜(あかりがわあかね)とかいう妄想、そろそろやめた方がいいんじゃねーの?」


「何度も言うけど、これは生まれてこのかた彼女がいたことがない俺の痛い気な妄想じゃなくてダナ……」


「はいはい妄想乙」


 もはや最近では相手にされなくなってきた。

 でも確かに証拠はなくて、ただ名前と外見が全く同じということで判断しているので、こいつにそれを証明する手立てがない。

 

 つまりは現時点で俺はただの痛い奴というわけだ。


「また歩夢、幼馴染のこと言ってるの?」


 そう言って割り込んできたのは、このクラスの学級委員である氷見玲於奈(ひみれおな)。

 正弘と同じく高校入学時から仲がいい人物だ。

 

 青髪のショートボブは氷見にぴったりで、顔立ちも整っていて、ひそかに思いを寄せるクラスメイトも多い。


「またってなんだよ。俺そんな言ってないだろ?」


「言ってるって。それも毎回机にぐだーって感じで」


「それはいつものスタイルだ」


「いつもはもっとぐだーっとしてるな」


「ぐだーの度合い良く見分けられるな。お前ら俺のファンかよ」


「とにかく、幼馴染のことは忘れろ。せっかく頭いいだけでそれ以外平凡のお前がなぜかモテるんだから、一生に一度しかない高校生活エンジョイしてこうぜ? な?」


「……はぁ、善処する」


 確かに、彼女が欲しいのかと問われれば欲しいと答える。

 だけど俺の中には幼馴染のことが妙にちらついてしまうのだ。

 だってあいつは、嘘をつかなかったから。


 それにあの時、どこか絶対に叶うという確信があったのだ。


 俺の返答に二人はため息をついて、「こりゃだめだ」と呟く。

 

「ってか、なぜかモテるってなんだよ。それに頭いいだけで他は平凡とか……悪口か?」


 正弘はにやりと笑うだけだった。




   ***




 部活に入っていない俺たち三人は、放課後ファミレスでクソどうでもいい話をしようということになり、三人で歩いていた。

 うちの学校では文武両道を掲げており、部活加入率が九十パーセントを超える。


 そのため朝よりも道が空いていた。

 

「ん? なんかあそこ人溜まってね?」


「ほんとだ。なんだろう……」


 二人が指さす方を見れば、門付近に人が足を止まって溜まっていた。

 何かを囲むような、そんな感じで。


 近くに行くと、そこには門に寄っかかって口笛を吹く女性がいた。

 

「めちゃくちゃ美人だな……」


「モデルさんみたい……」


 二人が見とれてしまうほどに、顔立ちが整った、まるで人形のような美顔。

 髪は茶色で腰ぐらいまで伸びていて、掛けられたサングラスは可愛さの中にカッコよさを生み出している。

 赤色のベレー帽も又彼女に似合っていて、今この瞬間を切り取って保存しておきたいと思うほどに、綺麗だった。


「……」


「♪~」


 この鼻歌。聞き覚えがある。

 幼い頃にたぶんよく耳にした歌だと思う。

 

 刹那、女性と目が合う。


「歩夢?」


 名前を呼ばれた。

 間違いなく俺の名前だ。


 だけどこんな美人な知り合い早々いないので、現実味がわかない。


「歩夢ぅぅぅぅぅぅ~‼」


 目に涙をたくさん抱えた女性が俺に向かって駆け出してくる。

 そのときにサングラスが外れかけて目が見えた。


 ……茜?


 そう思った瞬間、女性が俺の懐に飛び込んでくる。

 それを咄嗟に受け止めた俺は、女性とハグする形になってしまった。



「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼」」」

 

 

 周囲が声を上げる中、俺は一つの確信を得ていた。


「久しぶり、歩夢。会いたかった!」


 下から見上げるようにそう言う彼女は俺が一番よく知っている人で。

 この距離から見てわからないほど、俺の目は腐ってなかった。


「久しぶり、茜」


 明理川茜(あかりがわあかね)。

 今を時めく大人気モデルで、俺の幼馴染。


 あぁそうなのか。

 どうやら大人気モデルになった幼馴染が、数年ぶりに帰ってきたらしい。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


読んでくださり、ありがとうございました(__)

作者のやる気にも繋がるので、評価感想ブックマークしていただけると嬉しいです(o^―^o)ニコ


そしてこの作品が。被っていたから連載中止したけどよく見たら被ってなかったから連載することになった作品デス。

幼馴染好きの僕としては、超好きな作品なので、僕も楽しんで書くので楽しんで読んでもらえたらなと思います(o^―^o)ニコ


また、新連載第一弾の

「クラスの地味な女子と根暗な男子が実は大人気モデルだと誰も知らない」

の方もよろしくお願いします!

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