デスクールライフの開幕
現代社会では、よく若者が『死』に関する言葉を口にします。
『死ねよ、おまえ』『殺すぞ』『うわぁ、これマジで死んだわー』と、言った言葉がそれです。
実際に、誰かが死ねとか、死んだと口にしたところで、誰もそれを実行しようとしないし、死んでもいない。殺すぞと言っても、本当に殺そうとする者も多くはないでしょう。
しかし、何度も死ねと言われた者は精神的な苦痛を受け、本当に自殺した者が存在するのも確かです。
その時、言った本人は何て言うだろうか?
『いや、俺は言っただけだし、それで本当に死ぬなんて思わないじゃん!?俺は悪くない!!』
これを口にした時点で、こいつは小学校で道徳と国語を重点的にやり直したほうが良い。
『死ね』と言う言葉は命令形である。
つまり、その者は何度も『死ね』と命令しておいて、言っただけだと言うのは間違いである。
さて、ここまででご理解いただけただろうか?
現代社会に生きる若者は、要するに自分の口にする言葉に責任が無いのだ。
では、どうしたら責任感がつくのだろうか?
簡単かつ恐ろしい方法だが、1番効果的なのを私は発案しよう。
殺すぞと言った者には、本当にその相手を殺させれば良い。
死ねと言った者の目の前で、本当に相手が死ねば良い。
口にしたことを実行させ、罪悪感を与えれば良い。
え?もしも、それでも治らないバカが居たらどうするかって?
それはそれで、面白いことになりますね♪
私は面白いことがだ~い好き!!
中でも、愚かな人間が愚かなことをして愚かに苦しんでいく、人間として壊れていくのって、見ていて面白くありませんかぁ?
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???side
ジャック『こんばんわ。昨日、遂に始まりましたね?強制ワードゲーム』
クイーン『あれ、考えたのは誰なんですの?私、あんなゲームをするなんて聞いてませんけど』
ジャック『あれは私が考えました。1学期を乗り越えた1年生には、そろそろこの学園の真の姿を知ってもらおうと思いましてね。組織としても、そろそろ見極めを始める時期になりましたから。最近の若者には調度良い娯楽でしょ?これは言わば、
キング『流石はジャックだ。このショーは面白いと言えば、面白い。今頃、ゲームに参加している奴らは、このゲームの本当に恐ろしい事実を知ったことだろう』
ジャック『キングは、もうこのゲームの
キング『まぁな。それにしても、ジャックの性格の悪さには恐れいる。やはり、こういう人間の本性が出るようなゲームを考えさせるなら、おまえが適任だ』
ジャック『お褒めに預かり光栄です』
クイーン『何々?私だけ話から置いていかれてるような気がしますけど』
キング『クイーンは気にしなくても良いことだ。おまえ、2年だろ?ゲームに参加してないじゃん』
ジャック『それにしても、例の少年はどう動きますかねぇ?それに、あの娘も』
キング『奴らの動きが気になると言うことは、どうせおまえ、また何かする気なんだろ?』
ジャック『キングがおっしゃったんですよ?私たちに任せるっと。ですから、我々の邪魔にならない内に、もう何もできないようにしようと思いまして。反乱分子となる英雄の娘と、愚かな復讐者に。彼らの弱点は、もう予測済みですから』
キング『あまり口出しする気は無いが、気をつけろ。おまえも俺が覇道に進むための、大切な
ジャック『わかっております、我らが王よ』
クイーン『私、何か協力しましょうか?』
ジャック『今回は私だけで十分ですよ。あなたの可愛いペットの出番はありませんから』
キング『それでは、今日はこれで解散としよう。それぞれ、役割をこなすように。エースとジョーカーには俺から言っておく』
ジャック『承知しました』
クイーン『ラジャー』
all clearと入力し、俺はパソコンを閉じる。
そして、スマホで椿円華と最上恵美についての個人データを見る。
「最上恵美は最も注意しなければならない女だ。あの男の力が遺伝している可能性もあるからな。しかし、椿円華…か。涼華さん、あなたの弟であろうとも、手加減できるかはわかりませんよ」
フッと笑ってスマホを閉じ、机の上においてあるチェス盤に、白いポーンと黒いキングを対面させるように置く。
「どうであれ、俺の覇道を
俺は白いポーンを握り、そのままボキッと握りつぶした。
ーーーーー
円華side
校門まで来れば、壁のせいで中は見えないが、聞こえてくる叫び声からして、状況がすぐに
ここから出せ、開けろという声からして、学園から出たがっているが、出してもらえないんだろう。
そして、外に出た生徒も学園内に入れないつもりだ。
「おい……こんな中に入るのかよ?いや、無理だろ」
「そうだな、正門から入るのは無理だ。だけど、別にここだけが入口じゃない。レスタ、正門以外に入れる場所はあるか?」
スマホに居るレスタに聞けば、彼女は『はい、少しお待ち下さい!』と言い、30秒後にルートマップが出てきた。
『今、椿さんたちが居る正門から回り込むようにして行けば、一般生徒には知られていない裏門があります。そこからなら、学園に入ることが可能です』
「わかった。レスタ、そこまで誰にも見られないようなルートをナビしてくれ」
『了解です!』
レスタのナビに従い、誰にも気づかれずに小さな黒い門を見つければ、そのまま学園内に入った。
裏門から戻れば、校内はもう混乱状態だった。
壁の中は人の死体が所々に転がっており、それを見た瞬間に、基樹がすぐに俺の後ろに隠れて口を押さえ、
「何だよ、これ……こんなのって、ゲームとかアニメの中だけじゃないのかよ……!!」
基樹の言葉は
この状況から、死に関するワードを誰かから言われた者が1人ではなかったのだとわかる。
おそらく、地下街にも死体があるだろう。
正門が見えてくれば、学園を出ようとする生徒の群れが、厚くて重い、黒い扉を叩いているのが視界に入った。
そして、到るところで自暴自棄になっている者や、ワードを言っただろう者を責め、殴る蹴るをする集団。
その他にも様々な異常が起き、教師や警備員が止めようとしているが、1度流れた絶望の波は簡単には
まさに、混沌とした状態だ。
「基樹、あの中に佐伯は居るのか?」
「う~ん……いや、見えないな。どうする?あいつが居ないと、何もできないんじゃねぇか?」
「いや、この状況なら佐伯じゃなくても、取材相手はゴロゴロ居るさ。だけど、この混乱の中で話が聞けそうな奴なんて居るかどうか……」
周りを見て、話を聞けそうな者を探していると、後ろから久しぶりに聞く男の声が聞こえてきた。
「貴様……椿円華か!?」
その声を聞いた途端、俺は露骨に、そして心底凄く嫌な顔をして後ろを向いた。
そこに居たのは、やはり俺の予想通りの男が立っていた。
「
「お嬢様のおられるところ、常に俺は存在する」
「つまり、和泉も学園に残ってるってことか。今、どうしてる?つか、この状況は何だ?周りが混乱しすぎだろ」
「お嬢様は自室に待機してもたっているが……まさか、貴様はこの動画を知らないのか?」
「動画?」
雨水が俺にスマホの画面を見せる。
そこには青いタキシードに身を包み、白いシルクハットを被っていて黒い笑顔の仮面で顔を隠している何者かが椅子に座ってこちらを見ている姿が映っていた。
動画が再生される。
『やぁやぁやぁ、皆さん、どうも初めまして~。僕の名前はイイヤツだよ~。強制ワードゲーム初日はいかがだったかなぁ?たくさん人が死んじゃった?キャー、良きかな良きかなぁ。面白いねぇ』
イイヤツ?確か、レスタが言っていた新しいシステム管理者だ。
『皆さん、さぞかし混乱していることだろうねぇ。何で学校生活で人が死ぬんだよって感じで~~。ただでさえ階級制で競争社会の学校なのに、その上、人が死ぬなんて……うぷぷぷっ、アハハハハっ!!斬新で面白いって思わない?』
その言動は俺たちの不安だけでなく、怒りも
『と言うかぁ、君たちはこう思ってることだろうね。どうして、こんなに人が死んでいるのに、警察もマスコミも動かないんだって。本当だったら学校内に警察が殺到して、社会問題になってるよねぇ~~。どうしてか、気にならな~い?
ヤナヤツは人差し指を立て、首を横に傾ける。
『それはねぇ、この学園では日本政府から特別にそういうことが許されてるからなんだよぉ~。真の実力を測るためには、死を意識する極限状態の環境も必要だからねぇ~~』
こいつ、何を言おうとしている?
イイヤツという名前とは裏腹に、画面の向こうの仮面からは不気味な悪意を感じる。
『この才王学園に入学してきた諸君には、この学園の本当のルールを説明していなかったねぇ。この学園で、どうして卒業生が1割を切っているのか、その真実を。簡単に言おう、今回のような命をかけた特別試験で死傷者が多数出るからなんだよねぇ~~。生き残った者が勝者、死んだ者は敗者。ちなみに、このルールを知っても知らなくても、この学園を去った生徒は全員死んでるから安心してねぇ。もちろん、この動画の後に学園を退学、転校しようとした時点でその人は殺すことになるから!』
陽気な声で絶望的な真実を口にするイイヤツ。
こいつ、学園長が俺に話していた事実を全員にばらしやがったのか。
イイヤツは足と手を組んで話を続ける。
『君たちがこの学園から生きて解放されるためには、私が出す特別試験を乗り越え、Sクラスに上がるか各クラスの上位層に上がるしかないことがご理解いただけたかな?さぁ、今までの人狼ゲームのような生ぬるい特別試験はただのお遊び。ここからが、極限状態で真の実力を測る、本当の
動画はこれで終了だ。
イイヤツは、緋色の幻影のことを一切触れずに学園の本性をさらしてしまった。
だから、みんなこんなに混乱してるのか。
スマホを雨水に返し、5秒ほどで頭を整理して彼に確認を取る。
「雨水、和泉の所に案内してくれないか?情報が欲しい」
「情報?まさか、このデスゲームのことか?生憎だが、何もわかっていないぞ?」
「……すいません、1番話がわからないのは俺なんですけどぉ……。もしかしなくても、これって俺場違いだよなぁ、円華?」
申し訳なさそうに手を挙げる基樹を見て、俺は少し気まずくなる。
やばい、完全に基樹の存在を忘れていた。
雨水も基樹のことを知っていても、接点を持とうとしていなかったからか、どうしようかという顔をしている。
まぁ、遠目から見てても基樹には近づきたくないし、雨水に関しては和泉にも近づけたくないだろうからな。
しかし、俺は満面の笑みを作ってこう言った。
「基樹、喜べ。おまえの大好きな美少女と会えるぞ?」
「え?マジで!?」
雨水から凄い形相で睨まれたが、あえてスルーした。
しかし、一応は説明しておくか。
「このデスゲームを止める方法をいくつか考えてきた。だけど、それにはいろいろと情報面で手が足りねぇんだ」
「……いくら貴様でも、学園側の特別試験を止めるのは困難だろう。本当にできると思っているのか?」
「自信がなきゃこんなことは言わねぇよ。だけど、情報が少なすぎるんだ。俺としては、ゲームが始まってからの学園内の状況を知りたい。それで、顔が広い和泉の協力が必要なわけだ」
「ふむ、そういうことか……しかし、貴様は特別に許可するが、あの金髪の男はお嬢様に近づけたくないぞ?」
「大丈夫。下心は丸出しだけど、根は良い奴だ。問題ねぇよ」
「問題大有りだろうが!!」
5分ほど根気良く説得し、雨水の案内で俺たちはAクラスのマンションに向かった。
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